スポーツ

女性アスリート盗撮被害のひどい実態。「競技団体も守ってくれない」

JOCはようやく通報窓口を設置した

個人撮影仲介サイト

個人撮影仲介サイトでは、さまざまな競技の盗撮画像や動画が大量に販売されている。サイト側は「売買の環境を提供している」だけと強弁し、「売買自体には一切関与しない」立場だ

 実業団の短距離選手Bさん(23歳)は、被害体験をこう話す。 「私の盗撮画像に体液をかけている局部の写真や、『あなたで抜いている』とDMを送ってくる人もいた。高校時代は田舎で、盗撮の存在自体も知らず、被害に気づいたのは大学4年の頃。でも、誰かに助けを求められるものではないと思っていた。友人の選手は所属チーム宛てにアダルトグッズが送られてきたり、同じような目に遭っている人は多いけれど、声を上げたのを見たことがない……」  状況改善を訴える声を受けて、JOCは通報窓口を設置したが、激増する被害にようやく競技団体が重い腰を上げた格好だ。実際、一連の動きは、女性陸上選手2人が勇気をもって声を上げたのがきっかけだった。

「撮られた選手が不快に感じたらハラスメント」

 ただ、一般人による撮影の規制には、競技団体や選手のあいだに温度差があるという。元全日本テコンドー協会理事・アスリート委員長で、女性選手のハラスメント被害に詳しい高橋美穂氏が説明する。 「アスリートの写真は競技を盛り上げるので、競技団体や選手自身が歓迎する側面もあるが、撮られた選手が不快に感じたらハラスメントなのに、昔から盗撮問題はあったのに放置されてきた。これまでJOCには盗撮についてガイドラインはなく、委ねられた各競技団体の対応はまちまちで、大会運営のセキュリティ対策に盗撮は初めから盛り込まれていなかった」  前出のBさんが続ける。 「まともなスポーツ写真を撮ってくれるファンまで締め出すのはどうかという人もいれば、たとえ盗撮でもファンがつくならOKという人もいる。私が盗撮問題についてSNSで少し話しただけで『競技に集中していれば、気にならないはずだ』『そんなことを言っているうちは、まだまだ』と言われたし、選手同士でもこの問題を話したがらない。  また、報道の腕章をつけているのに、跳躍種目を敢えて正面から撮影したり、怪しい人はいる。JOCの取り組みは評価するけれど、これまで盗撮問題をなかったことにしてきたのもJOCや競技団体です。本気度がわかるのはこれからです」
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法規制がないことが盗撮が減らない最大の原因
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