スポーツ

女性アスリート盗撮被害のひどい実態。「競技団体も守ってくれない」

法規制がないことが盗撮が減らない最大の原因

無許可撮影禁止

昨年10月の木南道孝記念陸上競技大会では、「無許可撮影禁止」の看板をスタッフが掲げていた。こうした対策が広まるのか? 写真/朝日新聞社

 現在、競技場では一定の盗撮対策がとられているようだが、問題点を前出の酒井氏が指摘する。 「最近は、大会によっては短距離のスタートラインの後方を撮影禁止エリアにしているが、競技場のスタンドは広く、望遠レンズを向ける人がいても盗撮かどうか判別するのは難しい。一般の撮影を登録制にしたり、入場時の持ち物チェックや、スタンドを警備員が巡回したりしているが、予算の問題もあり、こうした対策は全国大会のような大規模な試合に限られる。  大会主催者が怪しい撮影者に対して、撮った写真をチェックできる権限くらい付与しないと、有効な対策にならないのではないか」  こうした実情に、選手からは「法律で取り締まって、厳罰を下さなければ盗撮は減らない」と悲痛な声も聞こえてくる。現行法で規制することはできないのか。アスリートの肖像権などに精通する河西邦剛弁護士に聞いた。 「アスリートの盗撮に限らず、全国一律で盗撮を規制する法律はなく、都道府県の迷惑防止条例で対応しているのが現状です。ただ、条例が規制する盗撮とは、駅でスカート内を撮影するように、『衣服で隠されている部分』を撮ることなので、アスリートには当てはまらない。  また、撮影された写真が性的目的かどうか第三者が区別するのは困難で、『競技を撮っていただけだ』という反論が必ず出てくる。法規制がない現状が、盗撮が減らない最大の原因になっているのです。現状では、プロアスリートは撮影OK、学生はNGというような線引きも必要ではないか」  昨年9月には、法務省で「盗撮罪」の新設が議論された。盗撮がなくなる日は来るのか……。

盗撮マニアの身勝手で呆れた言い分

 卑劣な盗撮を繰り返すのはどんな人たちなのか。取材に成功した盗撮マニアに言い分を聞いた。 「もともとネットのアダルト掲示板でエロい写真を拾っていたけど、普通に“流通”している写真に飽きたので、自分で撮ってみようかな、と。盗撮といっても更衣室に潜り込んでいるわけではないしね。ビーチバレーの会場で盗撮が警察沙汰になったニュースを聞いたときは、すぐに望遠レンズを買いにいきましたよ(笑)」  盗撮歴8年という40代男性は、悪びれるそぶりも見せないどころか、「あんなエロい格好して、撮るなと言うほうがおかしい」と犯罪の意識は微塵もないようだ。 「もともと素人の若い女のコが好きで、AV女優のような脱いでいる女性が見たいわけじゃない。NHKの陸上の中継も観るし、自分では陸上ファンのつもりだよ」
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プロデュースして育て上げたような“達成感”
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