コロナで売上が激減したマッサージ師。義実家への仕送りでさらに家計を圧迫
近年、飽和状態が懸念されていたマッサージ業界。整体や鍼灸に加え、ここ10年ほどで急増したもみほぐし、ボティケア等のリラクゼーション目的のマッサージ店の看板を街のあちこちで目にする。
だが、施術中は当然身体に触れることもあり、コロナ禍で多くのお店が売り上げ激減。5年前に独立したマッサージ師の中岡大毅さん(仮名・35歳)もそれまで順調だったが、順調だった経営状態は一気に暗転してしまった。
「ここ1年の売り上げで言うと、前年並みかそれよりちょっと少ない程度で済んだのは昨年8~10月の3か月だけ。もっとも低かったのは緊急事態宣言が出されていた4~5月で、一時休業していたので例年に比べると9割減。11月以降は感染再拡大の影響で売り上げは再び落ちています。20年度トータルだと、19年度の3分の1くらい。冬場に入ってからの第三波は本当に辛かった。今もお客さんは減ったままですし、コロナ前ほどまではいかなくてもせめて8割程度には戻せないと正直厳しいです」
彼は専門学校在学中にあん摩マッサージ指圧師の国家試験に合格。卒業後は約8年、複数の店舗を持つ業界では規模の大きいマッサージ店で勤務。その後、生まれ故郷である九州に戻り、念願だった独立開業を果たす。
それほど大きな町ではなかったが固定客が付き、売り上げも安定していただけにコロナ禍で潮が引くように客足が減ってしまってはどうにもならなかった。
「感染対策をしっかり行っていることを触れ、地域内のお宅一軒一軒にチラシを配って回りましたし、初回向けのお試しコースを今まで以上の安い料金に変えたりもしましたが期待したほどの効果はありませんでした」
施術者は自分ひとりの個人店舗だったこともあり、経費を抑えるために昨年いっぱいで店のテナント契約を解除。以前から出張マッサージにも対応していたが、現在は派遣専門で続けている。
「もともと大半が店舗にかかる経費で、それだけに月20万円近い支払いがあったんです。ただし、飲食店やモノを売る商売と違って、仕入れなどのコストはほとんどないので今はなんとか赤字経営の状態を脱することはできました。けれど、今の収入だけでは家族を養っていくことはできず、半年前からスーパーでのパートを始めた妻の給料がなければ家計を回すこともできません」
それでも現在の世帯月収は約23万円。隣町に住むの中岡さんの母親が幼い2人の子供の面倒を見てくれているが毎日頼むわけにもいかず、妻もフルタイムで働きに出ることが難しいという。
「一時的にも実家に同居できればよかったんですが、兄夫婦が一緒に住んでいるので無理なんです。それでも家族4人だけなら慎ましやかでもなんとか生活できていけますが、今は妻の実家にも毎月5万円仕送りしなきゃならなくて……。義両親にはよくしていただいていたのでこんなことは言いたくないですけど、仕送りがなかったらここまで苦しまなくていいのにって思うこともあります」
義実家は居酒屋を経営しており、コロナの被害を直撃。ランチ営業やテイクアウト販売を始めたが、それでも売り上げは昨年の2割ほどだそうで中岡さんのマッサージ店よりもずっと深刻な状況だ。
経営悪化でお店のテナント契約を解除

義実家への仕送りが家計をさらに圧迫
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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