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『シン・エヴァ』はスター・ウォーズを超えた? 3度目の完結の意味

第三村の農業シーンへの見解は?


 また、第三村の農業シーンも賛否が分かれる。庵野監督がエヴァをつくるとき影響を受けた作品に、1987年出版された村上龍の小説『愛と幻想のファシズム』(講談社)がある。エヴァの登場人物と同じ名前のトウジ、ケンスケが政治結社「狩猟社」をつくり、勢力を拡大していく物語であり、エヴァ同様に農業のイメージとは大きくかけ離れている。 「自然への回帰、環境問題とか、いろいろなものの象徴を読み取り、反発する人もいるでしょう。『結局、年を取れば農業か(笑)』と。  これまでエヴァには普通に暮らしている人は出てこなかった。でも、『シン・エヴァ』では日常をちゃんと描いた。おばあちゃんたちと綾波レイが交流するシーンを描けるようになるとは、庵野監督が作家的に成熟している証でしょう。  そして、ラスト30分はこれでもかと新しい要素を入れてきて、最後は、エヴァらしく終えました」

“終劇”も繰り返される

 大森氏は庵野監督と同い年。エヴァを同時代に捉えていたが、最近は世代を超えるコンテンツになってきたと感じている。 「大学生になる息子に『ATフィールドってなに?』と聞かれて、アブソリュート・テラーだよと即答しながら思わず笑ってしまった(笑)。30代だった私がエヴァの造語や謎解きに夢中になったように、若い世代もエヴァの謎に惹かれるのは感慨深いですね」  ”終劇”も繰り返される――。
大森望氏

大森望氏

【SF翻訳家・大森 望氏】 ’61年、高知県生まれ。京都大学文学部卒。翻訳家、書評家。責任編集の『NOVA』全10巻で第34回日本SF大賞特別賞、第45回星雲賞自由部門受賞。訳書に劉慈欣『三体』(共訳)など。「ゲンロン大森望SF創作講座」主任講師 <取材・文/美波七海 村田孔明(本誌)>
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