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『シン・エヴァ』はスター・ウォーズを超えた? 3度目の完結の意味

ATフィールド、使徒、人類補完計画……’95年のテレビ放映から謎が謎を呼び、20世紀末に社会現象となったエヴァンゲリオン。’07年からの新劇場版4部作もついに完結だが、その結末を巡ってまたも論争が起きている――。 ※本記事には『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のネタバレが含まれます。

エヴァンゲリオンはスター・ウォーズを超えた?

「ジョージ・ルーカスもできなかったことを、庵野秀明はやり遂げた」  ’97年、週刊SPA!で「完結しない『エヴァンゲリオン』をめぐる大論争」を特集。その解説を務めたのはSF翻訳家の大森望氏だ。四半世紀を経て、完結したエヴァをどう観たのか。再び大森氏を取材すると、「エヴァは3度目の完結で日本の『スター・ウォーズ』になった」と評す。
シン・エヴァンゲリオン

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』公式サイトより

「スター・ウォーズとエヴァのテーマは、どちらも普遍的な父と息子の葛藤です。親子ゲンカに世界中が巻き込まれる話。そして、親世代から見れば子育てに悩む物語でもあるので、SFやオカルトの要素に関係なく、多くの人の心に響く。  ルーカスは自分自身では物語を終わらせられなかったけど、庵野監督は25年をかけ、自らの手で律義に一つ一つの要素を回収して幕を引いた。前作『Q』を観たときはちゃんと決着がつけられるのかと少し疑ってしまったので、今は、本当に申し訳ございませんでした、という気持ちです(笑)」

『シン・エヴァ』で論争となっているカップリング問題

 ’07年9月に新劇場版が公開される数か月前、庵野監督は漫画家の安野モヨコさんと結婚。だからこそ、庵野監督の私小説とも呼ばれる「エヴァ完結のためには、新キャラのマリとシンジが結ばれなければならなかった」と大森氏は話す。 「いわゆるカップリング問題は、『シン・エヴァ』で論争となっていますが、父と息子の対立に決着をつけるための一つの方法が『結婚』だった。  ラストの実写は庵野監督の地元である宇部新川駅からの風景です。親に結婚の報告をするため、シンジとマリは電車を降りたとも想像できる。結婚して家庭を持てば、恐れていた父も自分と同じような悩みを持つ人間だとわかる。  ただ、新劇にはカヲルくんの『今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ』のセリフなど、物語がリピートしている痕跡がちりばめられており、『シン・エヴァ』は庵野監督が乗った電車がたどり着いた一つの終着駅というだけ。ほかのカップリングの可能性もちゃんと示されています」 シン・エヴァ
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