仕事

コロナ禍で悩みを抱える新入社員たち。数ヶ月で辞めた原因とは

研修なしで配属、サービス残業、休日出勤「やっていけない」

スケジュール 昨年4月、フォトスタジオで働きはじめたlisaさん(23歳・Twitter:@arinko809)。学生時代、音楽の勉強をしながらカメラマンとしてもアルバイト経験があり、それを活かせると選んだ職業だった。  新天地での日々に期待が高まる一方、コロナ禍で不安もある中で迎えた春、悪い予感は的中した。入社早々行われるはずだった入社研修などがされないまま、配属先が決まり、気づけば本格的に仕事が始まっていた。  何も分からないまま業務が進むことに、不安ばかり大きくなる。 「やっていけないかもしれないと思いました」  それでも懸命に仕事を続けたlisaさん。しかし書類の提出期限に間に合わせられず、休日出勤した上、残業代がもらえないことがあった。平日勤務では休憩が取れない日が多かったという。 「知らない間に体力的、精神的にも弱ってしまいました。入社から2か月ほど経って、自分には合っていないと自覚しました」  季節は夏になり、ようやく会社の経営方針や理念などを学ぶ時間が設けられた。そこで、やはり違うと改めて感じたlisaさん。「わたしにはどうしても合わせられない」と感じたそうだ。  lisaさんは思い切って上司に退職を申し出た。もちろん、上司は「勿体ない、あなたならできる」と励ましたという。  そうした言葉はlisaさんを思い留まらせた一方、会社に迷惑をかけている、負担を与えていると感じさせ、むしろストレスとなった。何度も話し合いを重ねる中で、ある日、上司からこう言われた。

上司が一言「コロナ禍じゃ仕事見つからないよ」

「新卒一年未満で退職、そのうえコロナ禍では次の仕事は見つからないよ」  lisaさんは頭が真っ白になる。どんどん気持ちが後ろ向きになり、体調の悪い日が続いた。「今辞めたら、どうなるんだろう」。どん底に落ちていた。休みの日も仕事のことで頭がいっぱいになり、趣味を楽しむ余裕もなくなっていた。  そんなlisaさんだが、入社から10か月後、ついに退職した。 「辞めたいけどコロナで転職は難しいと言われた頃、母親に、『ちょっとおかしいよ』と言われたんです。ずっと音楽が好きだったのに、趣味ですら音楽から遠ざかっていて。そんなこと今までなかったので、そう言われたんだと思います。  辞めたことに後悔はしていないです。もちろんお世話になった会社の皆さまには申し訳ないですし罪悪感は残ります。もし我慢していたら慣れて楽しく仕事が出来ていたのだろうかと考えることも未だにあります。ですが、社会人として色々学べたので経験値としてプラスになったと思います」  lisaさんはこの春から音楽教師として新たな一歩を踏み出した。 「社会人2年目とはいえどゼロからのスタートで不安がいっぱいです。でも自分が自分であるためにどう過ごすかをよく考えて、仕事もプライベートも両立していけるようにしたいです」  彼女は、自分の気持ちと真っ直ぐ向き合って決めることが大切な気がすると強調していた。  コロナ禍で希薄になった人と人との繋がり。いま、多くの会社でリモートワークが推奨され、飲み会などの会合も自粛となっている。  その弊害か、新入社員たちは仕事の悩みを相談できず、上司が気づいたときには退職を心に決めているという状況が生み出されている。オンラインでもケアできるかどうかが大きな課題と言えよう。 <取材・文/星谷なな>
5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き27歳。 たまに写真も撮ります。
1
2
おすすめ記事
ハッシュタグ