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日本の「コロナ対策」が世界より大きく遅れている根本的理由<評論家・佐高信氏>

これは「菅禍」だ

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日本のワクチン接種率はOECDでも最低レベルだ photo by fernando zhiminaicela via Pixabay

―― 菅政権の新型コロナウイルス対策は完全に破綻しています。他の国ではワクチン接種がどんどん進んでいるのに、日本は大きく出遅れています。この原因はどこにあると思いますか。 佐高信氏(以下、佐高) それは菅が国民のことを何も考えていないからです。菅は「国民の命を守る」などと言っていたけど、嘘っぱちですよ。  それが端的にあらわれているのが、菅がいち早くワクチンを打ったことです。国民のワクチン接種は進んでおらず、毎日多くの人たちがコロナによって命を落としているのに、自分が真っ先にワクチンを打つなんて一体どういうつもりなのか。  アメリカで日米首脳会談が開催されるので、訪米するためにワクチンを打つ必要があったと言うかもしれないけど、自ら危険を冒さない人間の言うことなんて誰も信用しませんよ。あれでよく総理大臣が務まりますね。私は腹が立って仕方ありません。  また、菅内閣の中で誰がコロナ対策の責任者なのかわからないことも問題です。もちろん最終的には総理大臣の菅に全ての責任がありますが、厚労大臣の田村憲久もいればワクチン担当大臣の河野太郎もいるといった具合で、コロナ対策に関わる大臣が多すぎます。  菅が河野をワクチン担当大臣に起用したのは、政権のイメージアップを図るためだと言われていますよね。菅に人気がないから、国民の間で人気の高い河野を大臣に持ってきたというわけです。しかし、河野がスタンドプレーを繰り返しているから、足並みが乱れ、余計な混乱を招いている。もっと真面目にやってくれと言いたい。  最大の問題は、菅に「公」という考え方がないことです。菅はいまだに公邸に住んでいないでしょう。公邸だと誰と会っているかメディアにバレるから、公邸に住むのを嫌がっているという話があるけども、それだけじゃないと思う。菅は本質的に公というものが嫌いなんですよ。この問題はもっと徹底的に批判すべきです。総理大臣が公邸に住むのは、何か緊急事態が起こったときにすぐに対応できるようにするためですよね。好きとか嫌いとか、住みやすいとか住みにくいとかいう話ではない。そもそも公邸の維持費は税金ですからね。だから森喜朗ですら公邸に住んでいたわけです。  菅が公というものを嫌っているのは、菅が新自由主義者で、民営化を推し進めてきたことともつながっています。民営化とは正確に言えば「私営化」で、公を潰すということです。郵政民営化にしてもそうですし、国鉄分割民営化にしてもそうです。  しかし、コロナに対応するためには、病院や看護学校といった公こそが重要になります。だから、民営化を妄信する人間に、コロナ対策なんて無理なんですよ。大阪が酷い状況になっているのだって、橋下徹や松井一郎、吉村洋文が新自由主義者だからでしょう。政治のリーダーに公の観念がないこと、これが日本のコロナ対策がうまくいかない根本原因です。  そういう意味では、いまの状況はコロナ禍というより、「菅禍」や「安倍禍」と言ったほうがいい。菅や安倍のような新自由主義者が総理大臣である限り、コロナを抑え込むことは不可能です。

中野正剛がかわいそう

―― 菅総理に公という考え方が欠如しているのは、菅氏の長男・菅正剛氏をめぐる一連の総務省接待問題にもあらわれています。この問題はまさに公私混同であり、縁故主義そのものです。 佐高 あれは身内を特別扱いしているということですからね。安倍晋三も安倍昭恵や加計学園の加計孝太郎をはじめ、身内びいきや友達びいきが酷かったけど、菅にもそれに通じるところがある。菅は息子の接待問題を追及されたとき、言うに事欠いて「私とは別人格」などと言っていましたが、そんな言い訳が通用するはずないでしょう。  聞くところによると、菅正剛という名前は中野正剛にあやかっているそうですね。わざわざ息子の名前にするくらいだから、菅も中野正剛を尊敬しているのでしょう。  中野正剛とは戦前の政治家で、東條英機を厳しく批判したことで知られています。そのため、東條から目をつけられ、当局に捕まり、最後は自ら命を絶ちました。反東條のシンボル的な存在です。中野はヒトラーかぶれだったけども、誰も責任をとろうとしない中で自ら責任をとった数少ない政治家の一人です。  これは菅とは全然違うでしょう。菅に尊敬しているなんて言われたら、中野正剛がかわいそうですよ。  むしろ菅に似合っているのは、中野と敵対した東條のほうです。中野と親しかった緒方竹虎が『人間中野正剛』という本に書いていますが、緒方が葬儀委員長になって中野の葬儀を開こうとしたとき、東條は圧力をかけて葬儀を邪魔したそうです。また、東條は街のゴミ箱を漁り、国民がどういう生活を送っているか監視していたと言われていますよね。こうした陰湿なところも菅とそっくりです。息子の名前も、「正剛」ではなく「英機」にしたほうがよかったのではないか。  個人的な話になりますが、私は菅政権になってからTBSの「サンデーモーニング」に呼ばれなくなりました。安倍政権時代もオファーは少なかったけど、それでも3、4か月に1回は出演していました。私と大宅映子はサンデーモーニングがスタートしたときからのメンバーですからね。岸井成格より前から出演していたんですよ。ところが、菅政権になってパタッとなくなった。最後に出たのは昨年8月で、菅政権が誕生したのが9月です。忖度が働いているのか、官邸から何か言われたのか。実に陰湿です。  私はよく、安倍はヤクザで、菅は半グレだと言っているんです。ヤクザはヤクザで問題だけど、半グレはヤクザよりも凶悪凶暴だから、ヤクザが可愛く見えてしまう。安倍と菅の関係も一緒です。菅と比べれば、あれほど愚劣で悪辣だった安倍晋三が可愛く見えてしまう。それほど日本は倒錯した状況になっているんですよ。
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気概ある官僚はもういない
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げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

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月刊日本2021年6月号

【特集1】コロナ敗戦 A級戦犯は安倍・菅・加藤だ
【特集2】日本はどこへ
【特別インタビュー】五輪延期を打ち出すか 女帝・小池百合子の深謀遠慮(東京工業大学教授 中島岳志)


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