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『レジリエンスの時代 再野生化する地球で、人類が生き抜くための大転換』 著者のジェレミー・リフキンさんに聞く

―[月刊日本]―
『レジリエンスの時代 再野生化する地球で、人類が生き抜くための大転換』書影

『レジリエンスの時代 再野生化する地球で、人類が生き抜くための大転換』書影

レジリエンスに対する誤解

―― リフキンさんの新著『レジリエンスの時代』(集英社)の書名にある「レジリエンス」は、日本ではあまり馴染みのない言葉だと思います。レジリエンスの時代とはどういう意味ですか。 ジェレミー・リフキン氏(以下、リフキン) 「レジリエンスの時代」は「進歩の時代」と対比される言葉です。「進歩の時代」とは、いま私たちが生きている時代のことで、科学の驚異と数学の厳密さ、生活を楽にする新しい実用的なテクノロジー、そして社会の経済的な豊かさを増す上での資本主義市場の魅力という3つの要因に基づいています。  これらを結びつけているのが「効率」という要素です。効率は近代の原動力でもあります。個人であれ社会であれ、効率的であれば時間を節約することができ、使える時間が長くなります。また、天然資源の収奪と廃棄を効率的に行えば、より速く、より短い時間で、社会の物質的豊かさを増加することができます。  しかし、人類が効率化を進めてきた結果、自然破壊が進み、自然そのものが枯渇してしまいました。2020年に『ネイチャー』に発表された新しい研究で、気温の上昇と旱魃、そしてとりわけ森林破壊のせいで、熱帯林が吸収する炭素の量が1990年代に比べて3分の1減ったことが明らかにされました。世界中で猛威を振るっている洪水や干魃、森林火災、ハリケーンも、すべて人間が引き起こしたものです。  最近ではビジネス界からも効率化に異議を唱える声があがるようになっています。効率の追求が経済的混乱を引き起こす恐れがあるからです。  たとえば、私たちは医療機器から送電線に至るまで、多くの面で半導体に依存しています。しかし、半導体の製造には莫大な費用がかかるので、利益率は高くありません。また、半導体の製造にあたっては、緊急時に備えたシステムや、できるだけ無駄を排したサプライチェーンが必要になりますが、これらは大変なコストがかかるので、ほんの一握りの企業しか投資することができません。  しかし、もし自然災害でこうした企業の工場が機能しなくなったとしても、半導体は一握りの企業しか製造できないわけですから、その分の半導体を他で埋め合わせることができません。効率性を追求すれば、想定外の出来事に対して脆弱になってしまうのです。  これは新型コロナウイルスのパンデミックのときに起こったことでした。当時、アメリカではN95マスクや個人用防護具、人工呼吸器などが足りず、さらに抗菌石鹸やトイレットペーパーといった基本的な生活必需品まで不足しました。これも効率化を進めて日常生活に必要なモノやサービスの生産を最も行いやすい地域に分散させていたからです。  これに対して、「レジリエンスの時代」には効率性に代わって適応力が軸となります。しばしば誤解されていますが、レジリエンスとは大規模な混乱に十分な堅牢性をもって応答し、元の平衡状態をすぐに取り戻す能力のことではありません。社会も自然界も常に変化しています。過去の状態には決して戻りません。適応とは、そうした変化の中に自らを定着させていく時間的営為のことです。  いま私たちに求められているのは、自然を人類に適応させるのではなく、かつてのように人類を自然に適応させていくことです。気候変動に関して言えば、温室効果ガスの排出削減に向けて努力し続けると同時に、温暖化によってもたらされる変化に絶えず適応する能力を見つけていくことが重要です。これが私たちを「進歩の時代」から「レジリエンスの時代」へと導く分岐点になります。
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絶滅危惧種としての人類
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倉重篤郎 究極の政治改革とは何か
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