ライフ

大手飲食チェーン店が嘆く「緊急事態宣言下の無茶苦茶クレーム」

感染対策を実施するも……

食券 Aさんの会社のチェーン店は、食券制である。入店後に販売機で食券を購入し、店員に渡す。その食券の手渡しが新型コロナの感染につながってしまうのでは……という指摘があったのだ。 「もちろん、それ自体は納得できる指摘です。だから我々も改善しました。お客さんが食券を置くトレーを設けたのです。それと、メニューの中には具の種類を口頭で伝えるものもありますから、飛沫感染を防止するために具の種類に応じた別のトレーも用意しました」  一見合理的な改善措置だが、これは結果的に失敗したという。 「ほとんどのお客さんは、もはや“食券の手渡し”が当たり前と思ってますからね。そもそもトレーの存在にすら気づいていません。もし強引に“食券はトレーに置いてください”と言ったら、それはそれでクレームが来るでしょうし……。まあ、板挟みってやつですよ」

「自分の確信」は絶対正義

 今回、Aさんから話を聞いて感じたのは「自分の確信を絶対正義と思っている人が存在する」ということだ。 「なぜ20時に閉店するんだ!」と強烈なクレームを入れた人は、その主張と真逆のクレームが来ていることなど想像だにしていないだろう。無論、「なぜ完全閉店しないんだ!」と言った人も同様である。無茶なクレームを入れる人ほど、その意見を担保するはずの想像力は実は存在しない。  Aさんは、今日もPCに向かって溜め息をついている。無理難題に等しい「お客様の貴重なご意見」を読み進めながら——。 <取材・文/澤田真一>
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー
1
2
おすすめ記事
ハッシュタグ