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素人“ビビリ人間”が漫才に挑戦したらこうなった!【動画あり】

 週刊SPA!3月13日発売号の特集記事「ビビリな自分の克服法」では、大舞台で緊張せずに最大限のポテンシャルを発揮するための手法を、実例&専門家の見解をもとにいくつか紹介した。その中で、ビビリ克服の荒療治として「小心者2人が舞台で素人漫才に挑戦」という体験ルポを掲載したわけである。

 誌面では「漫才挑戦決定から本番までの心の揺れ動き&緊張の度合い」についてお伝えしたわけだが、紙数の都合もあり、漫才の具体的なネタ、練習内容については触れずじまい。ここで改めて「ズブの素人が漫才のネタを考え、実際に演じるとどうなるのか?」をテーマに考察をしてみたい。

 まずは即席で結成された漫才コンビ「ビリビリ☆ビビリーズ」の2人について簡単にプロフィールを紹介しよう。

●Y野(32歳・男)
某アイドル誌の編集者・ライター。趣味はマンガ収集/幕末、戦国時代を中心とした歴史カルト、史跡巡り。好きなお笑いタレントはバナナマン。

●H瀬(30歳・女)
書籍編集を経て専門誌編集。趣味は連続ドラマ鑑賞。病的なアイドルヲタが高じて、モーニング娘。(4期)のオーディションを受けたこともある。

 企画の性質的には「ビビリ克服に小心者を舞台漫才に挑戦させる」ということもあり、小心者と聞いて即座に頭に思い浮かんだ2人に白羽の矢が立ったわけであるが、オファーをした時点で本番までの期限は7日間。

「台本書くのはいいけど、お題が欲しいでしゅ」と懇願するY野に「H瀬はモー娘。のオーディション受けるような恥知らずだから、ネタは『アイドル志望の三十路女とスカウトマン』」と指示する。その2日後、台本を書いたというY野からの知らせがきた(台本の内容は下記を参照)。

⇒【漫才台本1】 http://nikkan-spa.jp/wp-content/uploads/2012/03/bibiri01.jpg
⇒【漫才台本2】 http://nikkan-spa.jp/wp-content/uploads/2012/03/bibiri02.jpg

Y野: てへへ。南海キャンディーズを意識してみました。

 プロの漫才の台本なんて見たこともない。一見、ソツなくまとまってるようにも見えるが、書き手もそれを見る側も素人の悲しさか、内容の善し悪しの判別がつかない。何はともあれ、実際に読み合わせをしてみることにすると、やはり素人芸。日常生活においても、常に妄想世界にトリップしているようなH瀬は、「三十路なのにアイドルになりたい」という痛い女(ボケ)をそれなりに演じているのに対して、ツッコミのY野の台詞は声の張り、抑揚、間のとり方全体が棒読み、ローテンション一辺倒。まるで男子校の英語の朗読だ。

スタッフ: もっと殻を破って感情を出して! もっと自分に素直に!(修造調)

Y野: どうせ練習ですから……。感情入れるのは本番でいいでしょ。そもそも恥ずかしいし。

スタッフ: バカ! ここで恥ずかしがってたら、何もできんじゃないの。本番は知らないお客さんばかりなんだから。

H瀬: 一緒にコンビ組まされる私の立場ってもんも考えてくださいよ。

Y野に対する集中口撃。元々がセンシティブな人間であるY野はこの雰囲気にすっかりいじけモードに入り、「今日はもう練習できない」と壁を向いてブツブツ文句を言い、涙ぐむ始末。台本を見ていただければおわかりのとおり、Y野の台詞は長尺のものが多い。台本の一枚目にある

Y野: 「あっちゃんはなぁ~(中略)~アイドルの鏡なんだよ」(涙ぐむ)

 これを棒読みする“寒さ”をご想像いただきたい。とはいえ、すでに本番までに残された期間は5日間。Y野の演技力向上に期待するか、台本の見直しを図るべきか? 思案に暮れるスタッフの前に、すっかり涙も枯れ果てたY野がやってくる。

Y野: いろいろ考えたんですけど、やっぱり僕は山ちゃん(南海キャンディーズ)にはなれない……んですね。あれが精一杯。感情込もった言い回しはムリだから、いつもの語り口調に書き直します。

 プロ芸人の表現力の凄さを身をもって味わったというわけだが、具体的な変更のポイントとしては、

× きたなっ! その顔じゃどんなに機嫌のいい赤ちゃんでも泣かせられるよ

○ ぜんぜん可愛くないでしょ!

 などと、「少しでもうまいことを言ってやろう」という部分を極力減らす方向にして、ツッコミの言葉をシンプルにした。

 その後は、それぞれ台本の暗記、暗唱を課題とし、本番までにビデオを回しながらカラオケボックスで延べ10時間の練習。期間限定とはいえ漫才コンビとしての絆を深めていく……のかと思いきや、本番前の最終練習の段階で、お笑いの方向性の不一致か、はたまた生理的な嫌悪感からか、お互いの不満が爆発する。

Y野: ここ、動きを出したほうがわかりやすいから、僕の肩に手を置くってフリにしよう。

H瀬: えっまた? 最初から感じてたんですけど、Y野さん、私に触れられたがってませんか? そういうシーン多すぎ!

 H瀬がまさかの「セクハラだけはマジ勘弁」発言。これを聞いたY野が猛り狂う。

Y野: んなことないよ、バカッ。だいたいH瀬さんこそ、今日はずいぶん化粧濃いし、なんでコンタクトなの? いつものアラレちゃんみたいなメガネはどうしたのよ!

H瀬: ダンスのジャマになるから外しただけですぅ。そんなにジロジロ見ないでくださいよ、イヤらしい!

Y野: ○△%×□$#&~ッ! じゃあ、言わしてもらうけど、「変顔する」って台本にあるのに、なんでアヒル口なの? 女を意識してんじゃないよ、このドブスが!

H瀬: 何よッ、このネクラ! 歴史オタ!!

 プライベートでも仲の良いお笑いコンビは稀というが、そんなところも実体験することとなった。

 そんなこんなで本番。「出演バンドの前座の時間帯なら」と、企画に賛同してくれたのは「新宿レノンハウス」。文字通り、ビートルズを中心に、ブリティッシュロック系のバンドが集まる本格派ライブハウスだ。

 ビビリーズ ビートルズ初来日時に前座でライブをしたドリフターズのような気分です。

 顔は青ざめながらも精一杯の虚勢を張るビビリーズの2人。本番前の心境はどのようなものだったのか。

Y野: ギリギリまで台本を確認したかったけど、意外に人が多くてまったく集中できなかった。だって、お店のお客さん、革ジャン着てる人が多いんですよ! ヘタなもん見せたら殴られるんじゃないかって不安になるじゃないですか!

H瀬: 台本を読める状況じゃなかったのは確かだよね。まぁ、やるだけのことはやったんで。意識したのはゆっくりしゃべること、笑顔でいること。あと、演じる役的に「私は可愛いんだ」って頭の中で繰り返して、自己暗示をかけました。

ビビリーズ

漫才ライブ中のビビリーズ。笑い声はあがったが、ネタがウケて笑いを取ったというより、「緊張感が伝わって微笑ましい気分になった」という舞台後のお客さんの感想が真実のようだ

 そして本番。途中、H瀬が台詞を忘れるというアクシデントもあったが、「もうできません! 許してください」という大事故には至らず、なんとか完走。

 笑える/笑えないは別にして、練習初日のグダグダな状況を見ている記者としては、及第点をあげられる内容だと思える(ライブの詳細は下記の動画でご確認ください)。

「初めてライブしたときのことを思い出したよ。僕はお笑いのことはよくわからないんだけど、ビビリーズの2人が舞台に上がった瞬間、緊張してるってオーラがビンビン伝わってきた。ネタの完成度うんぬんじゃなくて、大のオトナがこんなバカなことを大マジメにやるってことがいいんだよ。それが伝わればお客さんも応援してくれるんだから」(「新宿レノンハウス」本田オーナー)

 その後、ローリングストーンズの本格コピーバンド、応援(ひやかし)に駆けつけたSPA!編集部まいまいによるAKBライブなどで熱気を増す店内で、改めてビビリーズの2人に感想を求めた。

H瀬: 台詞がトンだ瞬間は真っ白になって、頭の中では高速で台本の内容を頭から追いました。たぶん舞い上がってるY野さんの緊張が伝染したんだと思う。でも、もっと練習時間があれば、もっといいものが見せられたって自信はありますよ、私。

Y野: あらかじめ「台詞が出てこなかったら、アドリブで回すとかムリだから素直に『台詞がトビました』って言おう」と決めていたんです。ただ、実際にH瀬さんの台詞がトンだときは、その取り決め自体を忘れて、『早く言え、思い出せ』ってひたすら念波を送ってました。

おそらく「二度目の舞台はないはず」という気の緩みからか、すっかり余裕の表情のビビリーズ。しかし、そんな極楽はこの世にはない。

今後も日刊SPA!上では、「素人だけど漫才に挑戦したい」、「ビビリーズよりは面白いネタをやる自信がある」という有志を募集、ビビリーズとの対戦の模様を記事にします。宛先は下記まで。

〒105-8070
港区海岸1-15-1 (株)扶桑社 週刊SPA!編集部「素人だけど漫才挑戦」係まで
Webでの申し込みは https://nikkan-spa.jp/inquiry から

 求む、挑戦者! <取材・文/スギナミ>

⇒【動画】はこちら「素人ビビリ人間が漫才に挑戦したらこうなった」(http://www.youtube.com/watch?v=uguO6hezNrk)

【取材協力】
「新宿レノンハウス」住:東京都新宿2-12-16 セントフォービルB106 TEL:03-3341-1334 営:18時~24時半 休:日・月・祝

週刊SPA!3/20号(3/13発売)

表紙の人/川口春奈

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