INTI宮本洋平代表。77年、兵庫県生まれ。「ヘアデザインで人生を変える」をコンセプトに、薄毛をカバーするヘアスタイルやテクニックを、個々のライフスタイルに合わせて提案
40代、50代になると、多くの男性が悩むのが薄毛と髪型の問題。若い頃は「薄毛になったら髪型はボウズ頭にすればいい」などとうそぶいてはいても、生え際の後退や頭頂部の薄さは徐々に進行していくもの。「まだ大丈夫」と、床屋や美容院で若い頃と同じ調子で髪型をオーダーしたところ、想像以上に薄毛が目立って大失敗…なんて体験をした方も多いのではなかろうか。
「薄毛の方が一般のヘアサロンで漠然とオーダーしてしまうと、失敗する可能性はかなり高いです」
そう語るのは、薄毛専門ヘアサロン「INTI」の代表を務める宮本洋平氏。大半の美容師や理容師に、薄毛カットの技術が浸透していないことがその理由の一つだという。
「特に女性の美容師さんには顕著ですが、薄毛の男性客が来て『やばい、どうしよう』と困ってしまう人は多いです。うまい、下手とは別の問題で、薄毛の方の心理を理解してないということが大きい。切ってはいけない箇所、例えばM字型薄毛の方の前髪を一様に同じ長さで揃えると、M字部分が強調されてしまいます」
通常のヘアカットの要領で前髪を同じ長さにしてしまうと、M字部分との長さが合わず失敗してしまう
具体的にどうオーダーすべきなのか。代表的な薄毛のタイプであるM字型、O型、U型の3タイプ別に宮本氏に紹介してもらった。
M字型の薄毛 サイドの膨らみが大きいと前頭部の薄さが目立つ
【特徴】
剃り込み部分がMの形に後退することから呼ばれるM字型薄毛。薄毛に悩む男性で一番多くパターンです。側頭部の髪は通常の毛周期で元気に伸びますので、毛周期が乱れ細くなってる前頭部と、そうでない部分の差をいかに縮められるかがポイントとなります。
【オーダーのコツ】
前髪を伸ばして剃り込み部分を隠そうとすると「割れ」が目立ちます。その対処法は前髪を短くすることです。そして、サイドの髪のほうがボリュームが出てしまうために、薄毛の部分の髪の少なさが強調されてしまいます。サイドの余分な膨らみを小さくするために、すきバサミで髪をすいてもらうか、刈り上げするなど、自分的に可能な限り短くし、地肌の透け感も利用して少なく見せるよう伝えてみてください。前髪は一律に切ってもらうのではなく、「M字の両側の部分だけがいつも短くなるから、センターよりも長く残しておいてほしい」と言うほうが意図が伝わりやすいでしょう。
頭頂部にボリュームがなく、前髪が割れ、M字が見えてしまう(写真提供:INTI)
全体に短くすることで頭頂部にはボリューム、前髪はM字がカバーでき爽やかな印象に(写真提供:INTI)
O字型の薄毛 カバーする毛を頭頂部に作るのがポイント
【特徴】
頭頂部がOの形で薄くなっていくO字型薄毛。側頭部や後頭部の髪は通常の毛量があるため、どうしてもO字部分だけがボリュームのないヘアスタイルになってしまいます。周りの髪のボリュームダウン、頭頂部のボリュームアップ、薄毛部分をカバーするための髪の長さの調節がポイントとなります。
【オーダーのコツ】
Oの部分を覆える長さの髪がマストとなります。カバーする毛を残し、周りを短くすることで中央部分をカバーすることができます。基本的にはO字周りの右側か左側のどちらかの髪を少し長めに残しておくことが必要です。右と左のどちらを伸ばすかの判断材料の一つとして、前頭部の分け目と同じ側を伸ばすのが基本です。「前頭部の分け目と同じ側の髪を伸ばして、O字の部分をカバーしてください」と伝えましょう。伸ばす長さは、O字の直径プラス2~3cmです。
頭頂部の地肌が、汗をかいたり、雨の日など透けてしまい気になる状態です(写真提供:INTI)
刈り上げることにより頭頂部の髪が黒々しく見え、O字周辺の髪の毛をカバーする様にします(写真提供:INTI)
U字型の薄毛 側頭部の髪を自然に活用、超ショートにする手も
【特徴】
薄毛がかなり進行しており、M字型とO字型の併発なども考えられるU字型薄毛。U字型薄毛をカバーするヘアスタイルには、いくつかの制限が生じます。側頭部の髪をうまく、かつ不自然にならないように活用できるかがポイントとなります。
【オーダーのコツ】
限りなく坊主に近いくらいまでサッパリとする手もありますが、坊主頭は日々のメンテナンスも必要ですし、そもそも坊主頭自体が誰にでも似合う髪型ではありません。そこで「ゆるパーマスタイル」という手があります。左右どちらかの側頭部の髪(しっかり髪があるところから下に向かって2~3cmの分量)をU字部分を覆えるくらい長く伸ばし、ゆるめのパーマをかけるスタイルです。頭頂部に自然に流れが集まり、ボリュームが出来るパーマをかけ、一気にオシャレな雰囲気にすることが可能です。
サイドの髪のボリュームが多く膨らんでおり、前頭部の薄さが強調されている状態(写真提供:INTI)
サイドの髪を切り込みすぎないくらいにカット。サイドの髪の長さを少し利用し前髪、頭頂部をカバー(写真提供:INTI)
要望が伝わるお店選びのコツ
写真を見ればおわかりのとおり、ガラっと雰囲気の変わる薄毛対策のオーダー方法。INTIのような薄毛専門のヘアサロンであれば「おまかせします」でOKだが、居住エリアなどの関係で利用できない人は、通える範囲のお店で自らオーダーをしなくてはいけない。お店選びのコツなどはあるのだろうか。
「まず大前提として、どのお店であっても『具体的にどこが薄くて悩んでいるか』を嫌でも最初に言わないとダメです。一番確実なのは、手紙を書いて持っていくとか、事前にメールを送っておくことです。100%確実なオーダーを口頭で相手に伝えるのは難しいものですし、そこまで準備していくことでスタイリストに『本気でやらないとやばい』という気持ちになってもらえます。
とにかく『なんとなく薄くなってきたんで』と中途半端にぼやかすのは良くないです。薄毛の問題というのは自分と他者の見え方や感じ方にズレがあるものですから。カミングアウトすることが恥ずかしいと思う方は、いつも行ってるお店と違うお店を選んだり、女性ではなく男性の美容師さんを指名するのがいいと思います。同じ男性でも、薄毛の美容師さんのほうが、よりいい提案をしてくれる確率は高いです」
また、より親身になって対応してもらうため、前後にお客さんのいない「朝一番の時間帯」や「混みすぎてないお店」、新規の常連さんを獲得したい「開店3か月以内のお店」などもうまくいく可能性が高いという。また、総じて側頭部や後頭部を短くすることが多いのが薄毛カットの特徴といえるが、例えば5mm程度にサイドをカットした際、1ヶ月で1cm近く伸びてしまうため、「お店に行く頻度は1ヶ月以内が原則」という。コストが高くついてしまう印象はあるが、サイドとバックをさっぱりさせたいだけなら、1000円カットのお店でも十分ということだ。
その他、せっかく整えた髪型をキープするための、自宅でのスタイリングの仕方なども重要だが、そちらは宮本氏の著書
『最速でバレずに気になる薄毛をカバーする ばっちりキマる for men』を参考にしてほしい。
【過去記事】⇒
薄毛の人がやりがちなNGな髪形「隠すのは絶対に悪手」
〈取材・文/スギナミ 撮影/山田耕司〉
完全個室のプライベート空間。写真は渋谷店のもの
薄毛専門ヘアサロンINTI
渋谷、新宿、東京、大阪、福岡の5ヶ所にサロンを展開。全室個室のため、周囲の目を気にすることなく、ヘアスタイルの相談ができる