ライフ

ワクチン接種の早い遅いに平等を求めたら…コロナ禍で露呈した“平等バカ”という病

国民は「ルールなんか守ったところでなんになる」

 日本人というのは協調性が高く、「自分さえよければ」という態度をあからさまに見せることを恥とする国民である。常に周りに合わせようとするそのような態度はいい面ばかりではないけれど、少なくとも社会の秩序を保つうえではプラスに働いてきたのも確かだ。  しかし、ここまであからさまな不公平が国主導で横行したことで、そんな日本人の倫理観や道徳観も根底から揺らぎ始めていると思う。でたらめな言い訳を並べたところでオリンピックだけが特別扱いされているのは歴然なのだから、ルールなんか守ったところでなんになるという気にさせられるのは当たり前だ。  こういう許容できないレベルの不公平が、時短要請や酒の提供禁止に応じない飲食店とか、緊急事態宣言下でも街に繰り出す人を続出させる原因なのである。  長引くコロナ禍やそれに対する政府の対応のまずさに国全体がうんざりしていることは確かだけれど、もしもオリンピック中止を英断するか、あるいはせめてオリンピックとの「不公平感」を払拭していたら、国民も多少は今より国に協力的になっていたかもしれないね。 <文/池田清彦>
1947年、東京都生まれ。生物学者。早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。著書に『世間のカラクリ』(新潮文庫)、『自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋』(宝島社新書)、『したたかでいい加減な生き物たち』(さくら舎)、『騙されない老後 権力に迎合しない不良老人のすすめ』(扶桑社)など多数。Twitter:@IkedaKiyohiko
1
2
3
平等バカ 〜原則平等に縛られる日本社会の異常を問う〜

新型コロナワクチン接種の大混乱、緊急事態宣言下での東京オリンピック強行、拡大し続ける経済格差、公平じゃない消費税、勘違いした多様性――偽りの「公平」から目を背けるな!『ホンマでっか!? TV』でおなじみの生物学者・池田清彦が説く、不平等な現実に向き合う知恵と教養
おすすめ記事
ハッシュタグ