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大手飲食チェーンの“やり手”店長が無職に。コロナ転職の厳しい現実

コロナの流行で売り上げは前年比50%減少

コンロ「統括マネージャーとそりが全く合いませんでした。これまで自分が好きにできていたことをやらせてもらえない。それでいて、『売り上げを上げろ、売り上げを上げろ!』というばかり」  もともと売り上げが悪い店舗のうえ、そこに拍車をかけたのが新型コロナウイルスの影響だ。 「どこの店舗もコロナ禍で売り上げが立たず、2月と3月は前年比の5割ほどまで落ち込んでしまいました」  そして、2020年4月に1回目の緊急事態宣言が発出されると、2週間の臨時休業を余儀なくされた。 「5月に入り営業は再開されたものの、売り上げは下がる一方。この頃から、『どう生き残っていくのか』をマネージャーと各店舗の店長たちが集まって会議を開く。しかし、現場の声には全く耳を貸さず、とにかく「経費・リネン(おしぼりなど)を削る』『それで駄目なら店舗を縮小しよう』。この考えには、もはやついていけない自分がいました」  まわりの店長たちは鈴木さんの気持ちを察していたようで、「辞めるなよ」「お前の力が必要だから」と声をかけてくれたという。その言葉が、かろうじて鈴木さんを踏みとどまらせていた。

複数の店舗が潰れ、社員やアルバイトも解雇

 しかし、何の解決策も生み出すことができないまま、夏頃には数店舗が潰れてしまう。社員やアルバイトたちも次々と解雇されていく。 「私が任せてもらっている店舗は何とかしようと奮闘してきましたが、制限のある運営ではどうすることもできず、年末には例年の2割~3割程度の売り上げしか立てられませんでした」  責任感の強い鈴木さんは、これまで感じたことのないストレスを抱えながらも売り上げの回復に努めた。だが、そのストレスと会社に対する不満は限界に達していたのである。  今年の初めに退職を申し出た。同僚たちから引き留められた鈴木さんだったが、自分の意思を覆すことはなかった。
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「退職に後悔はない」が…
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2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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