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生活保護バッシングが起こる背景。「休んでも大丈夫」な社会を作るには

完全雇用が“頑張らなくて良い社会”を作る

投票 ここ最近、企業に対して“生産性”という言葉を使って批判的な論調を展開する識者は少なくないが、その傾向は個人レベルでも例外ではなく、多くの人が「頑張らなければいけない!」「市場価値を高めなければいけない!」と口にする。  松尾氏は「完全雇用(待遇に対する不満があるために働かない自発的失業、転職や労働条件の不一致から一時的に働かない摩擦的失業を除き、労働の意思のある人がすべて働いている状態)を実現することが大切です」と解決案を語る。 「新自由主義的な考え方に至ってしまう背景として、経済状況が不安定であるために他人に配慮する余裕がないことが挙げられます。デフレ下では、どうしても数限りある職を奪い合う構図になりやすく、政府が生活困窮者を支援しようものなら『自分達の税金を怠け者に使うな!』と攻撃的な気持ちを持ってしまう。  ただ、景気が改善すれば、無理をして労働環境の悪い職場で働き続ける必要がなく、金銭的な不安感を抱かずにすむ。そのため、政府が積極的な財政支出を実施し、誰もが良質な雇用に就ける環境を整備すれば、他者に自己責任論を押し付けることなく、『頑張らなくても生きていて良い』『しんどくなったら休んでも大丈夫』という意識を醸成できるでしょう」

今私たち個人ができることとは?

 そして、個人レベルでできることについて、「まず『日本で財政破綻することはあり得ない』『政府の借金を恐れる必要はない』ということを知ること」と強調する。 「この財政破綻論が『生産性の低い中小企業は潰すべき!』『政府や会社は頼れないから、個人で稼ぐ力を身につけなければいけない!』といった新自由主義的な考え方を生み出す元凶になっています。  インフレ率が過剰に上昇しない限りは、政府は積極的な財政支出を行って良い、ということが国民の意識として共有されれば、生活保護バッシングのような“生産性=必要性”とする従来の息苦しい価値観から脱することができるでしょう。  なにより、2021年は10月31日に衆議院選挙が開催されます。どの候補者、どの政党が積極財政を表明しているのか、中小企業を淘汰する政策を推進しているのか、といったことに注視して、投票しなければいけません」  むやみに他人を叩くことをやめ、まずは日本の財政を考えることから始めてみてはどうだろうか。 <取材・文/望月悠木> 【松尾 匡】 経済学博士。1964年石川県生まれ。神戸大学大学院経済学研究科博士課程後期課程修了。久留米大学経済学部教授を経て、2008年立命館大学経済学部教授。著書に『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店)、『「反緊縮!」宣言』『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』(ともに共著、亜紀書房)、『新しい左翼入門』(講談社現代新書)等がある ※bizSPA!フレッシュより
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