仕事

郊外のガールズバーがコロナ禍で悟ったこと「私たちの仕事は要らない仕事ではない」

非常時だからこそ「ママについていくしかない」

mieu 府中──お客さんはどれくらいの割合で減ったんですか? さくら:半分以下でした。1日3組とかの日もザラだったかも。それも不憫に感じた常連さんがチョロッと顔を出してくれる程度だから、コロナ前の賑わいとは比べようもない寂しい感じ。カラオケもやらなくなりましたしね。お客さんが買ってきてくれたお惣菜とかを、お酒も飲まないまま食べたりしていました。しかもお客さんが少ないと、女の子に早く帰ってもらわないといけないんですよ。私は副店長の立場だから、それが一番つらかった。誰が悪いわけじゃないんだけど、やりきれない気持ちでした。 ガールズバーmieu──希望通りに出勤することもままならないとなると、その間は給料や生活の面でも苦労したと思われます。辞めるキャストも多かったのでは? ことり:ところが、誰も辞めなかったんですよ。「非常時だからこそ、ママについていくしかない」とみんな考えたみたいで。そもそも私はこのお店で8年働いていますし、さくらちゃんに至ってはお店がオープンしたときから11年働いていますからね。それはママの人徳によるところが大きくて。うちのママ、府中のカリスマなんです(笑)。もともとはキャバ嬢をやっていたんですけど、今は系列店を4軒も営業しているやり手ですから。  隣で話を聞いていたありさママは、ここで予想もしていなかった行動に出る。「私たちがどういう思いでコロナに立ち向かったのか知っていただきたくて、手紙にまとめてきました」と封筒を渡してきたのだ。便箋5枚にわたり直筆で綴られた魂の慟哭に、思わず取材陣も言葉を失った。以下はその一部抜粋である。
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ママが綴った“魂の慟哭”

≪一昨年の3月30日、都知事の会見を目にしたとき、まだ“緊急事態宣言”などという言葉も知りませんでしたが、即日スタッフを集めて一時的な全店休業を決めました。「夜の街」という言葉で、まるで自分たちが原因であるかのような報道を観ながら涙が出ました。≫ ≪不安になったり傷つくキャストさんたちに何度も話をしました。私たちの仕事は不要不急です。命に関わる場面では真っ先に削られます。でも、生きるのに必要ないものを欲しがれるのは幸せなことです。誰かに必要とされたり、愚痴を言ったり、馬鹿なことを言って笑い合うこと、孤独でないことはとても大切で、私たちの仕事は要らない仕事ではない。≫ ありさママ:まだ世間で感染対策が広まる前から、私たちは動いていました。最初にカウンターに飛沫防止の透明パーテーションを設置したときは、「なんだよ、これ!」ってお客様も笑い転げていましたね。客席のアクリル板も今でこそ当たり前になっているけど、当時は誰もそんなことはやっていなかった。だから100円ショップでブックスタンドを大量購入して、男子スタッフさんがDIYしてくれたんですよ。そこまでしても社会からのバッシングがすごいことはわかっていたから、キャストの子たちは外に出ないように徹底させました。コロナ前は「遊びに来てください」って街でティッシュ配りもしていたんですけど、そんなのはもはや自殺行為ですから。
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人と会って楽しくお話するのは素敵だなと
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出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。

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府中「ガールズバーmieu」
住:東京都府中市宮町1-11-1-2F
営:20時~25時 料:60分3000円~ 休:日
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