キリンと国軍系の合弁会社でも爆破事件
9月7日、国民統一政府(NUG)が発表した戦闘開始(「D-Day」)宣言では、「国軍への攻撃開始は国軍の残虐な行為に対抗するためにやむを得ず決意したものである」と明言し、国民全員に戦闘参加を呼びかけた。そしてこの宣言により、戦闘は国境地域からヤンゴンなどの大都市でのゲリラ戦にまで拡大していく。NUGによる戦闘開始宣言はほとんどの市民も理解を示しており、自分たちもPDFやCDM (市民不服従運動)に参加しているメンバーたちを食糧、医療、現金などで後方支援すると断言している。
人民防衛隊(写真提供:Radio Free Asia)
D-Day宣言後は、首都ネピドーでバイクに乗った国軍兵士が何者かに爆弾で攻撃され兵士8人が死亡、国軍系の大手通信会社・Mytelの通信塔が全国100か所以上で爆破されるなど、都市部でも国軍や警察を狙った襲撃や爆破事件が相次いでいる。
国軍系の通信会社Mytelの通信塔が爆破された現場
また、キリンホールディングが国軍系企業と合弁し「ミャンマービール」を販売するミャンマーブルワリーの事務所でも爆破事件が起こり、国軍系のミャンマー経済銀行では銃撃戦が発生している。このため一般市民は国軍関係の事務所や企業、銀行などの建物へは近づかないことを徹底しているのだ。
これに対し各国の動きを見ると、中国はインド洋に面するチャオピュー港から中国雲南省の昆明までの石油と天然ガス資源のパイプラインを確保し、インド洋へ抜ける利権を守るために現状はミャンマー国軍を支援している。ロシアも武器を国軍に売って利益を確保するスタンスだ。ASEANでは内政不干渉を建前としており、ミャンマー国軍と近しい軍事政権のタイなどもあり、全会一致の形では足並みも揃わず、今ひとつ国軍を強く非難できない。
その一方で、国軍当局から介入を受けていたノルウェーの通信大手テレノールは、ミャンマーの通信事業をレバノンの投資会社へ売却し早々に撤退した。アジアでは韓国政府が民主派NUG韓国事務所の設立に協力していくと発表し、注目を集めている。