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ラブホテル女性オーナーが見た“ワケあり”の人間たち。刑務所から感謝の手紙も――2021年ベスト10

部屋を散らかすヤクザに大説教

部屋

“姐さん”が使っていた部屋。リニューアルされ当時とは違う内装になっている

 1999年、大阪で新たなスタートを切った中西さん。社員教育をしながらホテル業務をこなしていたある日、「ヤクザの女親分」が泊まりにやってきた。 「組長である旦那さんと喧嘩して家出したそうで、1ヶ月以上泊まってはりました(笑)。いつも舎弟さんが食べ物とか差し入れを持ってきていましたね。ちゃんとお金を払ってくれてルールさえ守ってくれれば、私どもにとっては“お客様”なんですが……部屋の使い方がとにかくひどかったんです。ゴミをあちこちに散らかして、もうぐっちゃぐちゃ。毎日お部屋に90リットルのゴミ袋を持って行き、『どうにか部屋をきれいにしてくれ!』とお願いしていました」

父親からもらった大切なアンティーク家具に…

家具

当時客室で利用していた家具のひとつ

 そして決定的な事件が起こる。部屋に配置していたアンティークの家具に向かって、「姐さん」が食べ物をぶちまけたのだ。 「お掃除のために部屋に入ると、家具にちらし寿司がぶちまけてあったんですよ。その上に脱ぎ捨てた靴下も置いてあって。どうしたらこんなことになるの!? って、さすがに私もブチ切れました。『あのね、これ父親からもらった大事な家具なのよ。もうちょっときれいに使ってくれませんか? ゴミはゴミ袋に入れて!』って(笑)」  当時中西さんは30代。裏社会の「姐さん」に向かって啖呵を切るのは怖くなかったのだろうか。 「怖くなかったですね。正しいことを言ってるつもりでしたから。ルールを守って部屋を使ってほしいとお説教しました。それに従ってもらえるんやったら、居ていただいても結構ですよと。1時間半くらいお話していると、あちらも心を開いてくれたんですよ」 「整理整頓はできるけど、掃除はできひんねん!」  そう言って「姐さん」は自身でコレクションしている切手アルバムを取り出すと、中西さんに見せつけてきた。  親子ほど歳の離れた中西さんに諭され、「姐さん」も改心したのだろう。その後は問題を起こすことなく連泊を続け、旦那と仲直りをしたのをきっかけにホテルを去ったそうだ。
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ラブホテル事件簿
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0

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