恋愛・結婚

「生きる価値のないクズ」と罵倒され…モラハラ妻と離婚した男の“唯一の後悔”とは

自責の念がのしかかる

 娘と再び連絡が取れて会うことができたのはその数日後のことだった。2人で公園をぶらぶらと歩きながら詳しく話を聞いた。元妻とその夫が家具の配置のことで大喧嘩になり、八つ当たりでその怒りの矛先を娘にまで向けてきたということである。元妻は夫が変わってもあのヒステリックな性格は相変わらずのようだった。 「あのさ、パパ、またいっしょに住めるように頑張るから……」 「いや、もう大丈夫だよ」 「え?」 「あのときはちょっと怖かっただけ。私はなにがあっても大丈夫だよ。だって、強い子だもん」  娘はそう言ってにこりと笑みを見せる。僕はその笑顔がただ切なかった。心には自責の念がズシリとのしかかってくる。 「そんな強がり言うなよ。なにがあっても大丈夫な人間なんていないんだから、なにかあったらすぐに連絡しろ。ていうか、なにもなくてもこまめに連絡しろ」 「うん、ありがとう」  僕は腰を屈めて娘をぎゅっと抱きしめる。あの頃と同じ温もり。できることならば、この小さな体を抱きしめたままずっと離したくなかった。 <文/金子睦雄>
オカルトを得意ジャンルとするフリーライター。コロナが収束したらチベットに雪男の探索に出る計画を立てている。
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