更新日:2022年02月03日 16:33
エンタメ

元フジ・吉崎典子アナ。先生になりたかった20代の夢は定年退職後に叶えていきたい

アナウンス室からの異動に「とうとう来たか」

――50歳を迎えた2012年、アナウンス室から編成部に異動し、字幕統括担当部長に就かれました。一般企業なら異動は当たり前ですが、女性アナの場合、特別な思いがあるのでしょうか? 吉崎:「とうとう来たか!」と愕然としました。そろそろ異動があってもおかしくないと予想していてもね。「あぁ、そうかぁ。私、新人OLになるんだぁ」って。 ――そこまで大仰に考えるものですか。 吉崎:そうですよ。28年半くらい、ずっとアナウンス室にいたんですから。 ――異動してみたら、いかがでしたか。 吉崎:50歳の新人OLなんて、タチが悪いですよね。普通のサラリーマンが身に付けなきゃいけないことが自分には備わっていなかったということも分かり、落ち込みました。例えば、異動するまで私はエクセルが出来なかったんですよ。 ――必要ないですものね。 吉崎:ところが、新しい部署は比較的大きな予算を扱うため、エクセルが使えないと仕事にならない。1日講習会に自腹で参加し、習得しました。異動の1週間後のことでした。

定年退職後の青写真

――昨年10月末、定年退職のときは泣けちゃいましたか。 吉崎:実感があまりなくて。泣けるというより、「まばたきを3回したら、定年になっちゃった」くらいの早さに驚いています。定年後の生活はあまり変わりません。専任講師を担当している「アナトレ」(フジテレビ直営の就活スクール)の仕事などで、今もフジテレビに通っていますから。 ――「女性アナ30歳定年説」どころか、実際にはNHK出身の加賀美幸子さんら70代、80代になっても活躍を続けている女性アナが増えています。人生100年時代です。今後の青写真は? 吉崎:今までに培った経験を生かしていきたいと思っています。たとえば、フジテレビが30年以上密着取材しているドキュメンタリー番組『密着!中村屋ファミリー』の監修や、中村屋の巡業公演で行われる芸談コーナーの司会や、歌舞伎のイヤホンガイド解説の仕事を続けながら、古典芸能の魅力を伝えていきたいですね。 それから、今は「アナトレ」でアナを目指す人たちを応援する立場でもあるので、「頑張って!」とか「応援しているよ!」「あなたは1人じゃないんだよ!」とか、一生懸命やっている人たちに伴走しながら、横から声を掛けていけたらいいなと思っています。還暦を迎え、1周回って元に戻ったような気がしていて、先生になりたかった私にはそれが一番合っているかもしれません。 ◆吉崎典子(よしざき・のりこ) 1961年10月29日生まれの60歳。東京都出身。都立武蔵高校を経て東京学芸大教育学部初等国語科卒。1984年4月、フジテレビにアナウンサーとして入社。『おはよう!ナイスデイ』や『報道2001』など看板番組のMCを歴任した。ベテランらしい高度なアナウンス技術を誇る一方、フジで評判だったのは人柄の良さ。「テンコさん」の愛称で親しまれた。今年の元日付で芸能プロダクション「生島企画室」と業務提携。フリーアナとして再スタートした。1月14日スタートのYouTube「平成中村座チャンネル」で中村屋ヒストリーのナレーションを担当している <取材・文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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