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ラーメンブーム、いつから始まった?“頑固オヤジ“から“文化”へ成長したワケ

人生で大事なことはすべてラーメンが教えてくれた

 人は、映画やスポーツなど好きなものから人生を豊かにするヒントを得たりする。青木さんがラーメンから受け取ったものとは。また、ラーメン店で感じた社会の移り変わりもあるという。 「ラーメンから言葉の意味を学べることもあります。『老舗』という言葉は、今は単に『古くからある店』という意味で使われていますが、本来は『代替わりした店』という意味なんですね。代替わりをするということは『先代のほうがおいしかった』なんて必ず言われるでしょうし、大変なことなんですよ。だからこそ、代替わりをしている店に敬意を評して『老舗』という言葉を使っていきたいですね」  言葉だけでなく、青木氏の本業でもあるデザインについても学びがあるという。
雷文と龍

丼の模様一つ取っても、それには意味がある。それを知ることは教養に繫がる

「丼の模様にも意味があります。丼の模様で四角い渦が二つ連なったようなものがありますね。あれは雷を表す雷文という模様です。雷は自然界の脅威ですから、その力を借りて邪気を払う魔除けの思いが込められているのでしょうね。  他にも龍のデザインは五穀豊穣の願いなど、模様からも思いを感じ取ることができますよ。こうした話って、実は教養に繫がると思うんですよ。だから僕は今書いておかなきゃって思い、『教養としてのラーメン』に書いたんです」

変化し続けることで変わらない味を作る

 社会は「変化」し多くの企業にも変化が求められる。だが、自身最高の味を求めそれに到達したらラーメン店はそれで終わりのようにも思える。もしかするとラーメンとは変化に弱いのではないのか……。 「春木屋というお店は、古い常連客からも『この店の味はずっと変わらなくて安心するね』と言われるんですが、実は味をずっと変え続けてるんですよ。僕もラーメンをかなり食べているほうですが、僕の味覚では到底その変化に気がつけないレベルです。変わっているからこそ、ずっと人気店でいられるということですよね」  変化の速度ももちろんだが、変化の方向性も間違えるとすぐに気づかれて、「変わっちまったな」と、お客さんが離れてしまうこともあるだろう。 「ただ旨味を増していけばいいのかというと、それも違うでしょう。もっと細かい部分をよく見ていると、『春木屋』ではおかわりのお水の入れ方も時代によって変化してるんですよ。昔は、何も言わずにサッと注いでくれていたんですが、ある時から『お水、お入れします』って一言添えるようになりました。  そうしてしばらくすると、それもまたやめて、『お水、お入れしましょうか?』って聞いてくれるようになった。味だけではなくお水の出し方まで、時代と社会を見ながら考えて変化させています。気がつかれない変化を」  一杯の水からも文化と時間の移ろいを感じることができるというわけなのだ。
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ラーメンで幸せになる
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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