仕事

現役看護師が見つけた“心の拠り所”「コロナ禍で毎日泣いていた」

コロナ禍で心境に大きな変化

ゆなしゃん とはいえ、本業である看護師の仕事は日勤と夜勤がある。生活は不規則だ。 「ライバーとして実績を上げようと思ったら、きっちりと時間を確保して配信しなければならない。ただ、看護師はそうもいかないので、ずっと課題だと思っています。  仕事が定時で終わらず、配信する時間もバラバラ。家に帰るのが遅くなって『今日はナシ』とか、そういう日も多い。それでも続けられているのは、自分に負担がかからないように無理なくやって、リスナーさんが温かい目で見てくれていること。それに全力で甘えていますね」  職場の人たちは、彼女がライバーやYouTuberであることを知らない。 「隠しているわけではないのですが、とくに言う機会もなかったので」  ゆなしゃんは過去にライブ配信アプリ内のイベントで1位に輝いたこともある。「月140時間は配信していた」時期まであるというが、現在はマイペースを心がけている。それほど大きな心境の変化には、“コロナ禍”も関係する。

恐怖と緊張感で「毎日泣きながら配信していた」

ナース服

ナース服を着たゆなしゃん

 新型コロナウイルスの感染拡大以降、医療現場が逼迫していることは周知の通りだ。 「自分自身、追い詰められていました。2020年2月、横浜港のクルーズ船がニュースになった後、私は防護服を着て“コロナ疑い”の患者さんに対応していました。治療薬がない状態で、感染したら死んでしまう可能性もある。未知のウイルスを相手にする恐怖と緊張感で若い看護師のなかには、現場で泣いてしまう子もいて。  彼女たちのメンタルケアをする必要があったのですが、本当は私もツラくて。そこで“心の拠り所”になったのがライブ配信です。家では毎日泣きながら配信していました。  コロナ初期の頃は医療従事者に対する偏見の目も強くて。近所のスーパーに行ったときは『あなたは看護師でしょ? なんで外を出歩いているの? まわりにうつるでしょう!』と詰め寄られたこともありました。正直、傷つきましたね。そんな状況下で、リスナーさんにたくさん励まされて。なんとか頑張ってこれたんです」  ゆなしゃんは当初、リスナーに対して何かを「与える(GIVE)」という意識が強かったと振り返る。だが、コロナ禍で「むしろ自分がパワーをもらっている」と気づいた。以降は、「力んで配信することもない」と思い直したのだ。 「アプリ内ではランクとかもあって。ライバー同士で競争するイベントもありますが、あまりこだわらなくてもいいかなって。それよりもみんなで楽しくやる。愚痴も含めて出来事を言い合って、それで1日が終わるみたいな。もはや“ライバーとリスナー”という関係よりかは、“家族”に近いのかもしれません
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ライブ配信の経験が看護師の仕事に活きている
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明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi

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