仕事

現役看護師が見つけた“心の拠り所”「コロナ禍で毎日泣いていた」

「もっと“AED”の知識を一般の人に知ってもらう必要があると思っています」  こう話すのは、現役看護師のゆなしゃん(Twitter:@i_am_yunashan)だ。総務省消防庁の報告によれば、コロナ禍でAEDの使用率と救命率が下がっているという(公益財団法人日本AED財団「緊急メッセージ」)。
ゆなしゃん

現役の看護師でライバー、YouTuberのゆなしゃん(28歳)

 ゆなしゃんは循環器内科・心臓血管外科に勤めており、まさにドラマ「医龍」のような救急医療の現場にいる。そんな彼女、じつはライブ配信歴は6年、「Pococha(ポコチャ )」を中心に活動するライバーでもあり、YouTubeチャンネル「隣の金持ち探偵団」でナビゲーターを務めるYouTuberでもある。  “三足のわらじ”を履くことは並大抵の努力ではできないが、ましてやコロナ禍である。医療従事者として、防護服を着て対応する機会もあったとか。そんななかでも配信活動を続けてこれた理由とはなんなのか。その裏にある想いとは?

楽しい思い出になるはずの運動会が悲劇に…

ゆなしゃん「救急外来を手伝っていたときに、心肺停止状態で運ばれてきた若い男性がいて。ただ、倒れた現場ではAEDを使っていなかったみたいなんです。命を守るための行動が、世の中には知られていないことを実感しました」  AEDとは、突然心停止の状態に陥ってしまった心臓に対して電気ショックを与える医療機器(自動体外式除細動器)。街中に設置されているのを見かけたことがある人も多いかもしれない。いざという場面でのAEDの使用が、救命率にも大きく関わってくるのだとか。  近年その認知度は上がりつつあるものの、一般人にとっては「使い方がわからない」などの課題が残されているという。 「患者さんは、子どもの運動会に参加している最中に倒れてしまったみたいです。私は看護師として、奥さんと子どもが泣き崩れている場面に居合わせて。もしもAEDの知識があれば、助かったかもしれないなって……」

AEDを知ってもらうためには影響力が必要

 ゆなしゃんは中学2年生の頃に両親から『13歳のハローワーク』(村上龍)を渡されたことがきっかけで将来について考え始めた。 「たくさんの人と関われて、生まれてから死ぬまでに全員が行く場所、そして『ありがとう』と言ってもらえる。それで病院の看護師になろうと思いました。高校は衛生看護科に進んで。その後は短大で学び、正看護師の国家資格を取得したんです」  短大卒業後、20歳から病院に勤めるようになったが、前述の出来事を目の当たりにして、AEDを一般の人に知ってもらう必要性を感じていた。  そんなときに、スカウトを受けたのだ。約6年前、当時まだ“ライブ配信”はメジャーではなかったが、可能性を見出した。 「他の媒体では、その人が興味を持って検索しないと情報が出てこないじゃないですか。当然、医療知識なのでハードルが高い。一方、ライブ配信の場合はリスナーが『この子はだれ?』ってところから入る。そこで自然な会話の流れからAEDを知ることもできる。また、コメントなどを通した相互コミュニケーションなので、伝えやすいと思ったんです。もちろん、そのためには、前提として影響力が必要になりますが」
次のページ
恐怖と緊張感で「毎日泣きながら配信していた」
1
2
3
4
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ