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借金8000万円、ゴキブリ養殖会社の経営者が“芸人”を始めた意外なワケ

38歳で遅咲きの芸人デビュー

——社長業が順調なのに、そこからなぜ芸人になろうとしたのですか? 小野:元々は会社が軌道に乗って、時間ができたときに、昆虫食のイベントを開催している人と知り合って。新宿ロフトプラスワンのイベントに登壇させてもらって、ゴキブリのアヒージョをふるまったんです。そこで初めて客前で話して、ゴキブリを育てている話がウケました。  生のライブで世の中には面白いことをやってる場所があるんだと感動して、その後は色々なお笑いイベントなどを見に行くようになりました。  自分が芸人になろうと思ったきっかけは、そこで畑山大魂という芸人に出会ったことです。ブリーフ一枚で漫画「きらりん☆レボリューション」を朗読する彼のネタを見て大爆笑して。実際に話してみたいと思ったのですが、ファンとして近づくと深い仲にはなれない。それならば、同じステージに潜り込むしかないなって。  そのライブを調べたら、3000円払ったら参加できると書いてあったので、自分でもネタを作って披露するようになりました。本当の目的は畑山大魂の観察なのですが、冷やかしで芸人をやっていると思われては感じが悪いので、「どうやったら売れますかね?」と“売れたい芸人”のフリをしていましたね。

TAP(旧オフィス北野)に所属するまで「オーディションでダンカンさんにキレられた」

ジョニー小野——畑山大魂さんに人生を変えられたわけですね。 小野:そうですね。彼は私の師匠です。でも毎回3分くらいの出番で3000円払うのは高いなと思い始めて。1分あたりに換算すると1000円、1時間だと6万、2時間で12万……。金額的には、どんな風俗だよと思って。  無料でライブに出れる方法はないかと模索していたところ、事務所ライブなら無料で出れるとの噂を聞いたんです。募集していた「TAP」(旧オフィス北野)のオーディションに参加して、天皇陛下をいじるネタをやったらダンカンさんに「そんなネタやる芸人、テレビ局に売り込めるわけないだろ!」とキレられまして。その次は風俗嬢のネタをやってみたらもっと怒られまして。案の定、連絡もなく……。 ——それでも今はTAPに所属されてますよね。オーディションは通ったのですか? 小野:いえ、落ちました。そこからコロナ禍に突入し、シェアハウスが軒並み潰れていって、会社の売り上げも落ちてきて。“数千万の借入”を返さなきゃいけないのに、このままでは厳しいかもしれない……と思っていたところ、TAPのマネージャーから「今何されていますか?」と電話がかかってきたんです。“ゴキブリ養殖の会社をやっている社長芸人”としてならばテレビに出れるかも、ということで誘ってもらいました。所属できたのはゴキブリのバーターだからなんです。  ダンカンさんとつまみ枝豆さんの面接があって、「やるからにはしっかりやってくれよ」と言われて、2020年9月から株式会社TAPに所属することに。いよいよ自分をコンテンツ化する“第三の事業”が始まる、そこで芸人という仕事に対して本気になりました。  また、水道橋博士の運転手として現場まで送り迎えしています。朝、ポルシェで博士の家まで行きますね。 ――借金は総額いくらくらいなんですか? 小野:8,000万円くらいですかね。以前、別のメディアに取材してもらったときに公表したのですが、その記事を奥さんがたまたま目にしてしまって。「こんな借金あってどうするの!」って怒られました。パソコンの履歴を確認したら「借金 離婚」「借金 保険金」とか調べられていて。  一応、自分が死んだら借金を全て返してお釣りが来るくらいの保険はかけているので大丈夫だよと伝えたら、奥さんは安心したみたいですが、妻と子供に、私が生活費以外にも利用価値があることを必死にアピールする日々です。 <取材・文・撮影/山崎尚哉>
’92年神奈川県鎌倉市出身。ライター業、イベント企画、映像編集で生計を立てています。レビュー、取材、インタビュー記事などを執筆。Twitter:@yamazaki_naoya
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