更新日:2022年04月12日 16:22
エンタメ

キムタクが30年近く主演を張り続ける理由は? 名優たちと比較した

丹波哲郎、渥美清との共通点

木村拓哉 未来への10カウント

テレビ朝日公式HPより

 キムタクこと木村拓哉(49)は名優である。異論のある人もいるだろうが、自信を持って言える。  近年、どんな役でもリアルに演じられる役者だけが名優であるという考え方が広まってるが、それは誤解だ。例えば故・丹波哲郎さんは名優だったものの、役柄の幅は狭かった。東映の黄金時代を築いた監督の1人で、丹波さんと親しかった中島貞夫氏(87)に聞いたところよると、丹波さんは偉そうな人物を演じるとピカイチだったが、普通の人に扮すると、からっきしだったという。  中島監督ら演出家の考え方は「どんな役でもやれてしまう人」も名優だが、「特定の役をやると抜群に輝く人」も名優なのだ。前者は劇団出身者に多い。30代から老け役などをやり、鍛えられているせいである。  国民栄誉賞を受賞した映画『男はつらいよ』の故・渥美清さんは誰もが認める名優だったものの、やはり役柄の幅は広くなかった。本人も自覚していたそうだが、インテリ役を苦手とした。  キムタクも何でも出来るタイプには見えないものの、格好良い男(または格好を付けている男)を演じたら、右に出る者はいない。そうでなかったら、1994年の連続ドラマ初主演作『若者のすべて』(フジテレビ)以来、ずっと主演を張り続けられるはずがない。

主演を張れるのはジャニーズ事務所の力?

「ジャニーズ事務所の力があったからだ」と考える人も中にはいるかも知れない。だが、いくら巨大事務所のプッシュがあろうが、ダメな役者だったら、長く主演を張るのは無理。視聴率が獲れず、淘汰される。  ジャニーズの力があれば誰でも売れる訳ではない。それは昨年4月に退所した近藤真彦(57)によって証明されている。本人が「ジャニーズの長男」と自称し、事務所側も猛烈に後押ししていたが、2000年代以降はさっぱり売れなかった。ヒット曲は出なかったし、テレビ番組への露出もほとんどなかった。  一方、キムタクの最近のドラマの世帯視聴率は2018年の連ドラ『BG〜身辺警護人〜』(テレビ朝日)の第1章の全話平均が15.2%。2020年の第2章が15.6%。2019年の連ドラ『グランメゾン東京』(TBS)は全話平均が12.9%。2020年『教場』(フジ)の前後編が15.3%と15.0%。2021年の『教場Ⅱ』(同)前後編が13.5%と13.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。堂々たる結果を出し続けている。 『グランメゾン東京』で演じたのは尾花夏樹。神業的な腕を持つシェフで、部下たちへの目配りも行き届き、言葉の一つひとつがイカしていた。服装や愛車も洒落ていていて、ハーレーダビットソンを駆っていた。  完璧といって良いくらいの男だった。その分、ほかの役者が演じたら、ウソ臭くなったはず。「いないよ、こんな男」と失笑する視聴者もいただろう。キムタクが演じたからリアリティーが生まれた。ファンタジーの世界にしか存在しないような車寅次郎に渥美清さんが生命を吹き込んだのと同じである。
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私生活も含めた役作り
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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