更新日:2022年04月12日 16:22
エンタメ

キムタクが30年近く主演を張り続ける理由は? 名優たちと比較した

私生活も含めた役作り

 キムタクに格好いい男(または格好を付けている男)の役がハマるのは容姿に恵まれたからだけではない。キムタクが普段から格好悪い自分を決して見せないことが大きい。  工藤静香(51)との結婚生活においては所帯じみた一面もあるかも知れない。人間なのでトホホな失敗をしたこともあるだろう。2016年のSMAP解散後、なぜか悪者になり、世論にボコボコにされたときには悔し涙を流したかも知れない。けれど、そんな面は絶対に明かさない。『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ)みたいなトーク番組などでおバカなところを見せることもない。  キムタクは格好良い男のプロなのである。シブイ男のプロだった故・高倉健さんに近い。健さんもユルい面は絶対に見せなかった。故・田村正和さんも2枚目である自分のイメージを崩さぬため、私生活を明かさなかった。

49歳が演じる格好良さとは?

 キムタクは4月期にはテレ朝の連ドラ『未来への10カウント』(14日スタート、木曜午後9時)に主演する。いうまでもなく格好良い男の役である。ただし、もう49歳なので単純な格好良さではない。  演じる主人公は桐沢祥吾。高校時代にボクシング日本一になったが、大学ではある事情により選手生活を断念。その後、最愛の妻を亡くし、生きる希望をすっかり失う。ピザ屋の宅配のアルバイトで食いつなぎながら、「いつ死んでもいい」と口にしていた。  それを見かねた母校のボクシング部の元監督・芦屋賢三(柄本明)が、部の後任監督に据え、生きる気力を取り戻させようとした。桐沢はこれを断ったものの、懸命にサンドバッグを叩く高校生たちを見るうち、自分の中で何かが変わり始める。  喪失から再生までの物語である。人生というリングで1度はKO負けを喫した桐沢が、再び立ち上がり、ファイティングポーズを取る。格好良い以外の何者でもない。  1996年の『ロングバケーション』(フジ)で演じた瀬名秀俊のような格好良さとは違う。当時のキムタクは23歳。溌剌としていた。また、今より遥かに気取っていたが、それがサマになっていた。だが、そのまま同じ路線を歩んでいたら、潰れていたはずだ。  現在の大人の格好良さを完全に身に付けたのは2017年に『A LIFE〜愛しき人〜』(TBS)で外科医・沖田一光を演じたころだろう。哀しみや憂いを漂わせるようになり、それが魅力に加わった。キムタクは進化し続けている。格好良いに徹するキムタクをワンパターンと言ってしまうのは簡単だが、格好悪いキムタクなんて誰も見たくないはず。  例えば『未来への10カウント』で桐沢が酒浸りになってしまったり、高校生たちのボクシングを見て「下手くそ!」と毒づいたり、いつまでも過去の栄光にすがっていたりしたら、ゲンナリするだろう。  キムタクは50代、60代、70代も格好良い男を貫くに違いない。このジャンルではほかの役者の追随を許さないから、キムタクの独走が続くはずだ。   <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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