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“バーチャル空間で踊る”クラブは定着するのか?コロナ苦境に喘ぐ業界の策

リアルの熱狂と同じぐらいの感動を生み出せるかが鍵になる

 だが、ナイトライフやクラブカルチャーを堪能しようとした場合、リアルの方が価値を享受しやすいのは周知の事実だろう。  その上で、メタバース空間を生かした事業を拡大していくために、どのようなことを心がけているのだろうか。 「Web3(ブロックチェーン技術を基盤とする新しいインターネットの概念のこと)の時代が到来し、メタバースが普及してもリアルの価値は無くならないと思っています。ただ、そこで大事になってくるのが『リアルでの熱狂と同じぐらいの感動を与えられるか』ということ。  要はリアルの代替ではなく、もうひとつの遊び場として提供できるかが肝になってくる。『リアルの方が楽しいじゃん』と思われてしまってはダメなんです。現在は、夏の本格リリースに向けて開発を進めているところですが、チャット機能を設けて交流できるようにしたり、自身で制作したアバターを投入できたり、DJにギフトアイテムを贈れたりと、メタバースならではの遊びが提供できるよう、鋭意制作中の段階です」  また、リアルのクラブイベントと決定的に違うのは「未成年やシニア層でも参加が可能」ということだ。
メタバースイベント

メタバースイベントのイメージ画像。世界的な有名DJもアバターで出演することで、新しい体験価値を提供しているという

 さながらゲームのように、気軽にメタバース上のクラブイベントに参加できるのも、メタバースならではの価値と言えるのではないだろうか。 「将来的には、普段イベント会場で使用できないような建造物や世界遺産で、メタバースイベントを開催していく予定です。というのも、イベントはロケーションが大事で、どこで開催するかで、全く世界観や雰囲気が変わるからです。連携しているMatterport社は世界中の建造物のデータベースを保有しているので、そのアセットを生かし、DiscoverFeedでしか開催できない全く新しいメタバースイベントを企画できれば、ものすごく可能性が広がると思っているんです」

クラブカルチャーは「ラグジュアリーな小箱」がブームに

 まだまだコロナ禍の影響は続き、ライブやクラブイベントなどは依然として開催しづらい状況だ。こうした社会情勢のなか、ナイトカルチャーの未来や遊び方はどのように変化していくのか。今後の展望も踏まえ、最後に渋谷さんに話を聞いた。 「2013〜2015年くらいは、フェスブームやEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)が台頭し、キャパの大きい大箱のクラブが流行りました。それが今ではだいぶ落ち着いてきて、ここ最近ではラグジュアリーなバーやラウンジといった小箱がブームになっています。  かかっている音楽も、踊れるテクノミュージックが全盛で、新たなトレンドが生まれていると感じています。こうしたリアルの価値は変わらずも、やはりWeb3の時代へとシフトしていくことから、メタバース上でのイベントも遊びの選択肢として挙がるように、リアルとバーチャルの良さを共存させていくことが重要だと捉えています。  僕も長年、この業界でやっていますが、現場へ足を運ぶ際は『メタバースの空間を作り、新しい体験価値を創らないか』と、地道に声をかけたりしています。まずは、メタバースイベントに賛同する仲間の繋がりを作り、遊びながら広めていければと考えています。今年7月には、世界の名だたるクラブをメタバース上で巡れるツアー企画もしていますので、今後の動向に注目いただければ幸いです」 <取材・文・撮影/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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