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若月佑美が考える72時間の使い方

寝続ける演技の大変さ

――病院ではベッドに寝ているシーンがメインでした。ほかの役者たちが周りは演技しているなかで、若月さんはどのような気持ちだったんでしょう。 若月:医療指導の先生から、私と同じ病状の人がどういう状態でいるのかっていうことを教えていただいて。呼吸も自分ではなく、呼吸器で勝手に行われている状態で、酸素量も機械で調節されているから、すごく肺に入ったと思ったら急にスーって抜けていったり、不思議な呼吸リズムになるらしいんです。それが自分の引き出しにはなかったので、それを表現したりしていました。  あとは夏希さんの言葉を発したいけど発せない、目を開きたくても開けない、意識はないけど亡くなってはいない。その状況が、セリフも何の動きもできない今の自分と同じだったので、気持ちを重ねて演じていました。 ――ほかには、寝ている演技の難しさはありましたか? 若月:撮影で1日中、寝ている日もあったんです。撮影の始まりから終わりまでベッドの中だから、寝ようと思ったらいつでも落ちちゃうんです。しかも私は、集中治療室に入っているので、共演者の方々はガラス越しでお芝居をしているので、声も遠いんですよ。みなさんが、「膝を曲げていいよ」「床ずれになってない?」など気を遣ってくださって、なんとか頑張りました。

困難な壁にぶつかったときどうする?

――映画では、時間が差し迫ったなかで、妻の命か、お腹の中にいる子供の命かの選択を迫られる部分も描かれていました。同じ状況だったらどうしますか。 若月:本当に難しい問題ですよね。私はいろいろな人の気持ちを考えてしまうタイプだから、お母さんとしてだったら、子供の命だけでも産んで助かってほしいと思う。でも第三者目線で考えたら、子供は助かってお母さんが亡くなってしまったら、葛藤や苦しみを背負ったまま人生を送らないといけなくなるかもしれないとか。残された旦那さんが一人で子育てをしていくのは大変なんだろうなって、いろんな感情が出てきてしまいますね。だから、観ていただいた方にも、いろいろな捉え方をして考えてもらうのがいいかなと思います。 ――そういう選択するのが難しい困難な壁にぶつかったとき、若月さんはどうやって解決していく? 若月:私は悩みやすいので、すぐに壁にぶち当たるんです。仕事の悩みが多いんですが、役作りをしていくなかで、自分自身との闘いがあるというか。自分の中ではナシなことも役ではそれをしないといけないことがあると、若月佑美が邪魔をしてきて演技でも自分の行動が許せなくなっちゃう。役として割り切ってすべてをやればいいんですけど、どうしても若月佑美として考えてしまうことがありますね。  それから頭ではわかっているのに、表現できないときが1番苦しいです。舞台でも映像でも、監督さんや演出家さんが言っていることもわかって、それを自分でも表現したいという同じ気持ちなのに、どうしても表現できない。そういうことが本当に難しくて、壁にぶち当たりますね。
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お芝居の表現はいまだに悩みです
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