更新日:2022年08月02日 16:13
スポーツ

“3人で年収367億円”の衝撃…パリ・サンジェルマンの台所事情を探る

投資は回収できているのか?

川崎戦で先制ゴールを決めたメッシ

 2017年にFCバルセロナからネイマールを獲得する際には2億2200万ユーロ(現在のレートで約308億円)の世界最高額の違約金を支払ったり、エムバペをASモナコから獲得するために1億8000万ユーロ(現在のレートで約250億円)を用意したりと、近年のパリ・サンジェルマンはその支出ばかりが取り上げられた。実際に2011年からの11年間で14億4000万ユーロ(約2002億円)もの金額を選手の移籍金として支払っている。しかし、湯水のようにお金を注ぎ込むだけでなく、しっかりと事業として成立させ回収している。  監査法人デロイトが毎年公表している世界サッカークラブ長者番付にパリ・サンジェルマンが登場したのは2012-13シーズンの収益ランキングになり、3億9880万ユーロ(現在のレートで約554億円)という額でレアル・マドリード、FCバルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・ユナイテッドに次ぐ5位にランクイン。前年度までは20位より下位の圏外だったにもかかわらず、いきなりトップ5入りを果たしている。その後はずっとトップ10入りしており、9年間の平均収益を5億1500万ユーロ(約716億円)としている。単純計算ではあるが、高額な選手を獲得した投資をきっちりと回収している。  また、クラブ長者番付にランクインした当初は収益の23%ほどが放映権による収入だったのだが、2020-21シーズンには全体の収益の36%ほどが放映権による収益となっており、その額も2.2倍ほど伸ばしている。さらに、フランスのリーグアンに関する放映権を保有するひとつがbeINメディアグループなのだが、その会長を務めるのがパリ・サンジェルマンでも会長を務めるアル・ケライフィ氏で、放映権を高く買い取ってクラブの収益をつくり、自ら作り出したソフトであるパリ・サンジェルマンを含む放映権を各国へ高く売るというカラクリをつくり上げている。

代表戦よりも高い“強気の価格設定”

 今回のジャパンツアーも収益をつくる事業のひとつとなっている。まず、20日に国立競技場で行われた川崎戦では、6万4922人が観戦。6月6日に行われた日本代表vsブラジル代表で記録した6万3638人を抜いて、新しくなった国立競技場の最多観客数記録を更新した。続いて行われた埼玉スタジアム2002での浦和戦、パナソニックスタジアムでのG大阪戦でも満員御礼で人気の高さをうかがわせている。  そのチケットの価格を比較しても、パリ・サンジェルマンのすごさがわかる。同じ国立競技場で行われた日本代表vsブラジル代表の試合と比較すると、日本代表戦のカテゴリー1で8900円に対して、川崎vsPSGは28000円という価格だった。最も安い第3層のゴール裏でも3200円に対して7000円となっており、同じ競技場の同じ席でも2倍から3倍近く高額とする強気な価格設定で販売。にもかかわらず、日本代表vsブラジル代表よりも川崎vsPSGのほうが集客数が多いという結果になり、チケットの売上高だけでも単純に3倍近い差をつけることになった。  また、来日したスーパースターらは試合日以外にも積極的に稼働して各種イベントに参加。連日ニュースとして取り上げられており、来日中は名前を聞かない日がなかった。そういった毎日の露出効果も影響し、クラブのオフィシャルグッズも好調に売れ行きを伸ばしたという。特に、会場での物販はどの会場も売り切れに近い状態となり、近年来日を果たしたどのヨーロッパのクラブよりもグッズを売っていったとうわさになっている。  実際には、クラブとプロモーター間で契約を締結してジャパンツアーの契約金が支払われ、チケットの売上やグッズの売上は直接的にクラブの売上にはなっていないのだろうが、およそ1週間ほどの滞在にもかかわらず大金を動かしていったことがよくわかる。  お金持ちの道楽として大金を投じてスーパスターを集めた金満チームというイメージが強いパリ・サンジェルマンだが、大きな額の投資で大金を稼ぐ仕組みをつくり上げたハイリスク・ハイリターンを実現させたドリーム・チームなのだ。今後しばらくはこのスタンスが変わりそうもないので、引き続き世界のサッカー界を席巻する注目のチームと言えるだろう。 <文/川原宏樹 撮影/Norio Rokukawa>
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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