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『水ダウ』への抗議文で考える“吃音者が感じる差別”とは。女性当事者に聞く

「吃音は隠さなくてはいけない」と思うように

――同じ出来事でも、差別やいじめなのか、人によって捉え方が違うんですね。では、同じ人でも、時期によっても感じ方が変わるのかもしれません。ミノリハさんのこれまでの吃音との付き合いを教えてください。 ミノリハ:幼少期は、吃音のことなんて気にせず、むしろおしゃべりなタイプでした。ですが、学校の先生に話し方を指摘されて病院に行くことになり、「自分の話し方はおかしいのかな」と自覚したんです。 それからは「吃音を隠さなくてはいけない」と思うようになりました。音読がある授業の前には練習をして、教科書のつまりそうな部分にチェックを入れたり、毎日、隠すことばかり考える生活でした。 ――ミノリハさんがもし、この「隠さなくては」と思っている時期に、今回の番組を見たらどのように感じたと思いますか? ミノリハ:その頃は、他人がどもっているのも受け入れられず、その様子を見て泣き出したりしていたんです。同じ学年に、卒業式で名前を呼ばれた時に「はい」の返事につまった友達がいました。その子がつまっている姿を見るのも泣きそうになっていました。そう考えると、番組も見られなかっただろうなと思います。

自分を見失っていくのが辛かった

――そういう意味でいうと、今回の放送を見て辛くなる方もいるでしょうね。吃音を隠す生活から、ミノリハさんと吃音の関わりは、どのように変化して生きましたか? ミノリハ:高校卒業と同時に「吃音をなんとかして無くさないと生きていけない」と思って発話訓練を試しました。でも、吃音をなくそうとして初めて「症状自体より、それを隠していることが辛かったんだ」と気づいたんです。”じぶんがいない”…私がノートに書いていた言葉です。吃音を隠すと同時に本来の自分を見失っていくのが何より辛かった。 それに気づいてからは、 どもりそうな言葉があっても言い換えや回避をやめてみたり、挨拶をする感覚で吃音をカミングアウトしてみたりして吃音と向き合いました。次第に「隠さずにどもらなければ!」という気持ちと、とっさに「隠してしまった」という罪悪感に葛藤することになります。
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もし吃音が治ってもつきまとう影
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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