更新日:2022年09月03日 16:37
エンタメ

最高齢DJおばあちゃん(87歳)が語る幸福論「軽い幸せが日常の中にたくさんある」

言葉にして行動することで楽しく生きる

餃子荘ムロ餃子荘ムロ 飲食店という忙しい仕事をしながら、77歳という高齢でDJの世界に飛び込んだ岩室さん。結婚の話を伺うと、DJだけではなくあらゆることにチャレンジする精神と、ポリシーに正直に生きる彼女の姿が見えてきた。 「昔は、結婚するのが当たり前という世の中でした。私にも若い頃から恋人がいて、結婚するように母からも言われていたんですが、石川達三の小説に出てきた『結婚とは性生活を伴った女中奉公みたいなものだ』という言葉を信じ込んでいたので、結婚を拒んでいたんです。  それでも随分経ってから、手続き上の事情と『25歳も年上だから、この人が先に逝ってくれる』と思えたので、しょうがないから結婚してあげました(笑)。  だから、実際に彼が80歳で亡くなった後に『自由だ!』と思いましたよ(笑)。それで私も還暦手前でしたけど、車の運転がしたくなって自動車免許を取ったり、昔から憧れていたニューヨークに、一人旅に行ったりしました」  とにかく時間と体力が許す限り、人生を楽しんでいるように見える岩室さん。これほどまでにずっと、自分を楽しませ続けられる秘訣は一体なんなのか。 「私は単純なので、軽い幸せが日常の中にたくさんあります。目の前にあるものにすぐにワクワクできるのがいいんだと思います。そして、なによりまず、やってみたいことや興味があることがあれば、誰かに言ってみることですね。言うのはタダですから(笑)。そうすると何かが始まることもよくありますよ」

岩室さんは語る「今はいい時代」

 自己肯定感という言葉をよく聞くようになった。その裏側には、自分が満足できる人生を送りたいという人々の希望が込められているのだろう。同時に、今の時代がそれをなかなか満たせないということも示唆しているようにも思える。岩室さんはそんな現代を見つめ、次のように語った。 「テレビを見ていると、最近は転職のCMをたくさんやってますよね。それは、今仕事があるけど、もっとよくなる可能性を求められる社会だということですよね。  私の若い頃は、働けない人もたくさんいましたから、働き口があるだけで幸せという時代でした。でも逆に言うと、今目の前にある幸せを感じきれていない人が多いということですもんね」  選択肢が多様化し、誰もが選ぶ権利を広げられたことは幸せなことだ。しかしそれによって私たちは、今手にしている幸せを、見過ごしてしまっているのかもしれない。 「でもね、今の若い方は、この時代の良さををちゃんと感じて一生懸命生きていらっしゃって、素晴らしいと思いますよ。なんとなくですけど、個人的には、若い方よりもうちょっと上の方がダメな気がしてます(笑)」 餃子荘ムロ 87歳の岩室さんに、将来の夢を聞くと、自然豊かで音楽環境も賑わっている、スペインのイビサ島でDJをやりたいと、まだまだ大きな夢を語ってくれた。私たちは、希望に満ちたみずみずしい生き様を失ってはいないだろうか。<取材・文/Mr.tsubaking>
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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