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借金500万円男「月400時間」働き続けて半年…借金はいくら減った?

気持ちは22歳、現実は29歳

 いつの間にか29歳になっていた。心の中は22歳くらいのまま止まっている。しばらく会っていない同級生たちへの想像は、リクルートスーツを着て社会を奔走しているイメージから脱却できていない。実態は会社の中でも重要なポジションを任され、もしかしたら結婚し、ともすれば子供もでき、人生の主題を誰かに託し始める頃合いかもしれない。  かつての知り合いと久しぶりに再開した時、 「まあ、色々やってるよ」  と答えて素直に羨望の眼差しが返ってきたのは確かに22歳までだった。もうこの年齢になると、懐かしさの中にある落胆や哀れみを隠そうとする彼らの優しさに乗っかり、感情の機微に気づいても見て見ぬふりをしてその場をやり過ごす事が多くなった。傷つけないように気遣ってくれる相手に「さっきのは痛かった」と伝えてしまうほど幼くはない。 「色々、ねえ……」  と、家路についてからアルバイトの予定表を見返す。工事現場で体を動かす仕事、とりわけ偏屈な高齢者ばかりと接する仕事、パソコンを使った簡単な事務。どれもこれも専門性に乏しく、語るほどにプロではない。やったことが無い人の視界に入っていないだけの「誰でもできる仕事」を通して見た業界の話をパッチワークのように繋ぎ合わせ、相手の視界の外の話をさも貴重な経験のように話す能力だけが達者になっていく。

気づけば「貧困と共依存」の関係に

 今でも20代前半の同僚には「よく効く」のだが、彼らもいずれ社会を数年経験して気づくのだ。「ああ、あの男(犬)は、そういうフリーターだったんだな」と。  その日の終わりは大体、これはアラサーのフリーターあるあるかもしれないが、30歳以降に花開いた有名人のwikipediaを閲覧する。それも、在学中に華々しい才能の片鱗が無い人間限定で、だ。特に何かがあったわけでも出自が独特だったわけでもないただの人間の中から出てきた成功例。寝る前に自分の中の可能性を0%から0.1%にしておくだけでも明日の太陽を拝む理由になる。せめて蜘蛛の糸でも垂れてなければ、腰を上げる理由も手を伸ばす理由も無い。  生活に余裕が出てきてようやく考えたのがこんなものばかりだ。周回遅れで、みんなよりもずっと不安定な安定を手に入れたすえに得たものは、今さらにもほどがある焦燥感だった。明日の宿代や来月の支払いを気にかけていた方がまだエネルギーに満ち溢れていたかもしれない。  いつの間にか、僕は貧困と共依存の関係になってしまっていたのだ。
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海外への切符は地獄への片道切符か?
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フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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