ウジウジしながらも惰性で安定を守るために毎日働く中で 「安い航空券があるよ」 　と言われたのはついこの間のことだった。 「それは聞き捨てならないっすね」 　ウイルス、円高、燃油代の値上げといった理由が次々と深刻になり、航空券の値段が跳ね上がっている今、たとえカジノから3年近く離れていても無視できない情報だった。社会情勢にはあまり詳しくないが、この先どんどん海外に行き辛くなることだけはわかる。 「マジで安すぎますね、これは」 　気の迷いだったのかもしれない。行ったところで大した金額も持って行けない。航空券を買ったところで、あまりにも見通しの立たない旅行になることは明白だった。それでも安さに惹かれて買ってしまった。 　本当に行けるかどうかはわからないが、お守りのつもりで持っていようと思う。 　いつでも台無しになれるチケットを手に入れてから、一本道だった歩道の横にうっすら下りの獣道が見えるようになった。仕事はまだまだ続けるつもりだが、景色は大分マシになった気がする。 　僕は運が良い。 ＜文／犬＞ フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩