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サッカー森保ジャパン快勝も「替えのきかない存在」が浮き彫りに

替えがきかない存在になった遠藤航

サッカー 遠藤

替えがきかない存在になった遠藤

 好不調を見極めた選考を主張したばかりだが、調子の波が多少変化しても起用すべき絶対的な選手は存在する。それは遠藤航だ。アメリカ戦では先発、エクアドル戦では途中出場だったが、得意とするデュエルからのボール奪取は世界に誇れる日本のストロングポイントになる。アメリカ戦では前線との連動した守備からよりゴールに近い位置でボールを奪い、早く鋭いカウンター攻撃につなげていた。エクアドル戦では相手に押し込まれる状況のなかでの途中出場となったが、バタついた守備を安定させた。  日本がグループリーグで対戦するドイツもスペインも、後方からショートパスでつなぎしっかりとビルドアップしてくるタイプで、どちらかと言えばアメリカに近いサッカーを展開してくる。それを踏まえると、アメリカ戦のような内容は日本にとっての理想となる。それ故に、何よりも遠藤航を中心に据えた戦術を考えて、試合に臨んでほしいと願う。  遠藤航を中心に考えたとき、とあるFWの併用を推したい。それはアメリカ戦で先発した前田大然である。前田は持ち前のスピードを生かして、相手の最終ラインへ積極的にプレスをかけていた。そのプレスがスイッチとなり、日本の守備は全体的に連動して効果的な位置でのボール奪取に成功していた。また、前田はプレスバックも惜しまなかった。自身の守備ラインを越えて中盤のブロックラインでの守備時でも、ボール保持者の背後から距離を縮め後方から追い詰めて挟み込みボール奪取に貢献していた。前田以外のFWは相手が脅威に感じるほどのプレスは見られなかったし、相手にかわされる場面もあったりでパスコースを限定しきれていない場面が見られた。

実績や貢献度に忖度しないメンバー選びを

 トップの選手としては、ボール奪取後にパスの受け手としての役割を求められる。しかし、その役割は伊東純也、鎌田大地、久保建英らが請け負える。しかも、遠藤航がいることで最終ラインではなく中盤でボールを奪えるので、トップよりも低い位置にいる彼らはよりゴールに近い位置でボールを受けられる。そこから逆算すると、トップになる選手の守備負担は大きくなってもチームとしては問題ないだろう。  さらに、そのままスピードを失うことなくフィニッシュに向かうためには、後方に下がってゲームを組み立てる田中碧より、積極的にゴール前に飛び込んでいける守田のほうが得点への可能性は高まる。  遠藤航を軸とする戦術はあくまでも一例だが、森保監督はそういったさまざまなことを想定して、今もなお頭を悩ませていることだろう。巧者である相手が理想どおりにゲームを展開させてくれるわけではない。試合中にでもこちらの出方によってやり方を変えられる。多くの状況を考えて一手先、二手先を取って相手を上回ることのできる戦術を試行錯誤しなければならない。  また、例年どおりではなく欧州のシーズン中に行われる過密日程のなかでは、先発の11人だけでは勝ち抜けない。増枠された5人の交代を上手に利用しなければならないことを考えると、選出された26人全員がスタメンを張れるだけの力が必要で、全員の力を使い切らなければ結果は残せないだろう。  よって、思い出枠は絶対に排除してほしいと願うばかりだ。記録がかかっているとか、年齢的に最後の大会になるだろうとか、これまで貢献してくれたとか、そういった温情はいらない。11月1日には、完全実力主義で現状のコンディションを最優先した26名の選手名が聞けることを切に願う。 <文/川原宏樹 撮影/Norio Rokukawa>
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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