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『武士道が日本経済の足を引っ張っている』呉座勇一が気づいた日本人の欠点

実業家・出口治明の一言から見えた日本人の弱点

呉座勇一

歴史学者・呉座勇一氏

売り上げが見込みにくいとされる歴史書の分野において、著書『応仁の乱』が48万部を超える異例のベストセラーを記録した呉座勇一氏。最新刊の『武士とは何か』では、武士の「名ぜりふ」から彼らの精神性を読み解くという新たな試みを行った。 「今回の挑戦の動機は、ライフネット生命保険の創業者で、実業家でもある出口治明さんとの対談です。『日本人は江戸時代の武士を模範としているから、内向的で海外に後れを取るのではないでしょうか』と質問され、ハッとしました。 一般的に武士といえば忠誠心に厚く、和を尊ぶ存在だと考える人が多いでしょう。しかしこのイメージは、平和な江戸時代に生きた武士たちの価値観でしかなく、戦国以前の武士にはあまり当てはまりません。むしろ正反対といってもいい。 そんな中世武士の性質を抜きにした“武士道”を日本人の国民性と捉えてしまうと、組織に埋没しやすい性格に育ってしまいますし、イノベーションにも消極的になりやすい。これは日本の未来にとっても良くない傾向だと思ったんです」

中世武士の精神は「個人主義」だった!?

普段は言及されることの少ない中世武士の本質を多くの人に伝えていきたいという呉座。彼らの精神性とはどういったものだったのか。 「自分がどうしたら輝くかを重視する、かなり個人主義的な人々でした。生涯同じ主君に尽くすという発想もありません。自分の魅力を発揮できない環境ならすぐに主君を代えますし、チャンスがあるなら独立だってします。 自分らしさや自分の価値の最大化を追求し、良い意味で自分主体。そんな彼らの姿勢はベンチャーマインドとも重なり、中世のように予測不可能な時代の今こそ見直されるべき存在かと思います」
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成功体験を捨てられた伊達政宗のスゴさ
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