エンタメ

秋ドラマ「コア視聴率」BEST10。業界関係者が本当に評価するのは

2位〜5位を視聴する層は?

アトムの童

番組公式ホームページより

 2位が『アトムの童』なのは納得である。山﨑賢人(28)が天才ゲーム制作者・安積那由他に扮し、オダギリジョー(46)が演じる巨大IT産業代表の興津晃彦とゲームをめぐって戦いを演じている。敵と味方がはっきりしていて、ゲームのように分かりやすい。  ストーリー全体も難解ではないから、家族が揃いやすい日曜の夜に向いている。10代の子供が30代、40代の両親と一緒に楽しめる。  ドラマ各賞を獲るような作品も難解だと視聴率は振るわない傾向がある。海外映画祭で絶賛された映画が国内でもヒットとするとは限らないという図式と近い。  3位の『相棒』は個人全体が7・7%ながら、コアは3・1%。50代以上の視聴者が多い表れだ。刑事ドラマは典型的な勧善懲悪で、1時間で見事に事件が解決するから、時代劇に近い。だから年齢層の高い視聴者に好まれる。  4位の『PICU』は新米小児科医・志子田武四郎(吉沢亮)の成長記。道徳的でもあるので、やはり子供と両親が一緒に観るのに向くだろう。近年の月9は『競争の番人』(7月期)など視聴者ターゲットが広い作品が続いている。  5位の『ファーストペンギン!』はシングルマザー・岩崎和佳(奈緒)が潰れかけた漁船団を立て直す物語。日テレとしては冒険だったのではないか。舞台がオフィスではなく、漁港で、和佳を除くと、出演陣の大半は漁師たち。調べたところ、こんな民放の連ドラは過去にない。もっとも、評判は良い。和佳の奮闘ぶりが痛快なのだ。また、オフィスを舞台にした作品が飽きられていることも背景にはあるだろう。

世帯視聴率は高いのに打ち切りになる番組も

 ドラマは視聴者の数の多い年齢層に向けてつくられてきた。例えばトレンディドラマの全盛期だった1990年前後は若者が多かった。  実は今も世帯視聴率は比較的簡単に取れるとされている。人数の多い高齢者をターゲットにした番組をつくれば良いからだ。例えば、今年2月に終了した情報番組「ガッテン!」(NHK)は最後まで12%以上の高世帯視聴率をマークしていた。  健康に役立つ情報が満載で、高齢者に歓迎された。半面、コアは2%以下。プライム帯では最低水準と言えた。これが終了の大きな理由だ。NHKも組織を維持しなくてはならないから、若い視聴者を意識している。  テレビは高齢者を斬り捨てるべきではないものの、世帯視聴率を物差しにしていると高齢者向け番組ばかりとなる。個人全体視聴率とコア視聴率の導入は自然な流れだった。<文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ