クロアチアには“意外な弱点”が。勝敗を分けるのは「交代のタイミング」か
現在カタールの地でFIFAワールドカップに参戦している日本代表は、グループステージでドイツ代表とスペイン代表を破って2勝1敗の勝ち点6でグループEを首位通過した。そして、日本時間5日24:00から目標に掲げていたベスト8以上を懸けてクロアチア代表と対戦する。森保一監督がスペイン後にコメントしたとおり、ドイツとスペインを下した日本代表の面々は、「世界の舞台で戦えるという違った新しい景色を見せてくれている」のですでに賞賛に値するのだが、だからこそ目標のベスト8入りを果たして、名実ともに「新しい景色」を見せられることを証明してほしい。
「新しい景色」の前に壁として立ちはだかるのがクロアチアになり、これまでの対戦成績は1勝1敗1分けと五分の成績となっている。しかし、ワールドカップ本大会だけで言えば、いずれもグループステージ第2戦で対戦し、1敗1分けと苦杯をなめさせられた相手だ。そういった因縁を考慮すると、「新しい景色」を前に対戦する壁としては格好の相手なのではないだろうか。
ご存じの通り、クロアチアは4年前のロシア大会で準優勝してる。しかし、4年前の準優勝メンバーは衰えを隠せず、現在は世代交代の過渡期といった状態だ。それでも前回大会と同じメンバーで構成するルカ・モドリッチ、マテオ・コバチッチ、マルセロ・ブロゾビッチの中盤は、今大会でも屈指の実力を誇っており、今なお一級品だ。実際に、グループステージを終えた時点でのパス成功本数では3人とも上位50人に名を連ねている。日本はこの中盤とどこまで張り合えるかが見どころのひとつとなる。とはいえ、モドリッチ以外は直接得点に関わることが少なく効果的なパスを配給してゲームをつくるタイプの選手なので、直接対峙で必ず抑えなくても他を抑えて守る方法も考えられる。それでも自由を与えると怖い選手であるのは間違いないので、可能な限りタイトにプレッシャーをかけられるように遠藤航、守田英正、田中碧を並べる中盤で対応してみてはどうだろうか。
クロアチアはドイツやスペインと違い、相手の最終ラインに対して5人を並べて攻撃を構成する戦術ではない。最前線は両サイドとセンターフォワードが並び、その後方に中盤の3人と両サイドが配置され攻撃を組み立てる。前線の3人と中盤が前後に出入りしながらスペースをつくり、そこへ素早くパスを送り込みゴールへと迫ってくる。特に、左サイドのイバン・ペリシッチが要注意で、大半の好機を演出している。ピッチを縦に5分割してどこから相手陣内の深い位置まで進入したかというデータがあるのだが、中央、中央右、中央左がそれぞれ10パーセント強で、右サイドが22パーセントほどとなっているのに対して、左サイドは42.5パーセントという結果になっており、左サイドがストロングポイントにしていることを示している。
日本はどう守るべきだろうか。スペイン戦のように3バックで臨み、最終ラインに5人を並べる必要はない。相手の3トップに対して3人の最終ラインでマンマーク気味に守るという方法も考えられるが、サイドに位置するウイングの2人はかなりワイドに広がるポジショニングを取るため、その場合には中央脇にできるスペースを巧みに使われるだろう。よって4バックにして、人もスペースも守るといった手法のほうが有効的だと考える。さらに、相手のストロングを封鎖するため、右サイドには冨安健洋を配置したい。右サイドバックの酒井宏樹は負傷を抱え、センターバックの板倉滉はスペイン戦で大会2枚目の警告を受け、そのサスペンションによってクロアチア戦を欠場せざるを得ないという不安要素はあるが、その穴はスペイン戦で先発した谷口彰悟に埋めてもらい、冨安にはエースキラーとしてのタスクを発揮してもらいたい。もう一方のセンターバックにはキャプテンの吉田麻也、そして左サイドバックにはデュエルに強い長友佑都の並びが、現在クロアチア戦を戦うベストなメンバーだと考える。
続いて、どうやって得点を奪うかを考察してみたい。クロアチアはサイドバックの守備が甘めだ。最前線まで上がるといったポジショニングは取らないまでも、攻撃時は両サイドが比較的に高い位置を取る。よって、攻撃から守備へと切り替わるタイミングでは必ずと言っていいほど、両サイドにぽっかりとスペースが空いている。また、サイドでボールを受けた相手に対してプレッシャーには来るがその詰めが甘いときが多く、圧力が小さい状態でプレーできる。加えて、その状態になったときは背後にスペースができる。
この状況でできあがるスペースをうまく使い相手陣内深くへ進入するのは、ドイツ戦やスペイン戦よりは容易にできるはずだ。ただ、クロアチアは中央が堅い。デヤン・ロブレンとヨシュコ・グバルディオルの両センターバックは、対人能力に優れポジショニングも的確でシュートやクロスを跳ね返してきている。さらに、中盤の3人の戻りも早くポジショニングが的確なため、ゴール前に有効なスペースが生まれにくい。これがグループステージ3戦を失点1で抑えたクロアチア守備力の秘訣になる。
余談にはなるが、左のセンターバックを担うグバルディオルは攻撃力にも長けている。相手の急所を突くパスを出せる能力もあれば、自らドリブルで駆け上がり好機の起点をつくる力も持っている。クロアチアの攻撃が左サイドに偏る要因を担うひとりでもある。
クロアチアは世代交代の過渡期
両サイドの守備が甘い
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スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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