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クロアチアには“意外な弱点”が。勝敗を分けるのは「交代のタイミング」か

サイドアタックに加えてもう一工夫

久保建英

体調不良が報じられている久保建英。クロアチア戦で出場なるか

 そういったクロアチアの守備に対して、日本はどうやってゴールの道筋を構築すべきだろうか。やはり、サイドにできるスペースをうまく使いたい。プライオリティーとしては、直接的に抜け出すようなシーンをつくってゴールを目指したい。ゴールに進めないまでも、深い位置までの進入をまずは狙うべきだ。続いて、相手が引いて陣形を固めた遅攻の場面でも、サイドで起点をつくり相手サイドバックを食いつかせたい。そして、3人目の選手が動き出してサイドバック背後のスペースへボールを回したい。  そうやってサイドから崩すことが有効的なのだが、そこからの難易度は高い。サイドのスペースを突いた場合でも両センターバックはそのカバーよりもゴール前を固めることを優先しがちだ。早い段階でGKと最終ラインの間を狙った低いクロスを狙いたいが、戻りが早いためそういった状況を生み出す場面は少ないだろう。また、サイド深部に進入した場合はゴール前へ戻るセンターバックの前、ペナルティーマーク付近にスペースができやすくなるのだが、これは中盤の選手が素早く戻り埋めてしまうので、同様にその状況をつくり出せるチャンスは少ないと考えたほうがいい。もちろん単純なクロスを入れても、高さのあるセンターバックに跳ね返される可能性が高い。  そのため得点を奪うには、サイドのスペースを突いた後のもうひと工夫が必要になる。クロアチアがグループステージで喫した1失点はカナダ戦で、右サイドからの素早く送り込んだクロスに競り負けて生まれたのだが、やはりセンターバックの戻りは早く人数はそろっていた状態だった。ただ、クロスを競り合わなければならなかったのがサイドバックで、その弱点を突かれた場面だった。また、クロアチアに限らずどのチームにも有効だが、自陣深部で左右にボールを振られるとマークする相手を見失いがちになる。ベルギーはその手法でクロアチア相手に好機をつくり出していた。日本も同様に浮き球のクロスを入れるにしても、ファーサイドを狙い一度相手の視線を振ってからのほうが、シュートチャンスを演出しやすいだろう。ボールを保持しながら押し込んだ場合には、左サイドから送り込んだボールを右サイドバックに起用した冨安が決めるといったシーンも十分に考えられるのではないだろうか。  もうひとつの手法として、狭いスペースを使ったコンビネーションも有効的だ。これもクロアチアに限った話ではないが、ゴール前を固められた相手に対しては、複数人が連動した素早いパス回しでマークをずらすことが有効打となり、シュートを狙う隙を生み出しやすい。

コンビネーションを考えるならこの3人

 それらを踏まえると、コンビネーションに長けた堂安律、久保建英、南野拓実を同時起用してみてはと考えている。この3人となった場合には高さがなく、セットプレー時には不安要素となることが懸念されるが、他の理由もある。クロアチアは後半になると運動量が落ち、前線と最終ラインが間延びする。そのとき互いがゴール前に迫るオープンな展開となりがちなのだが、広いスペースがあるときに力を発揮しやすい浅野拓磨、伊東純也、三笘薫を起用したほうがより有効的と考える。そして、彼らへのパス供給役として鎌田大地を投入すると、よりゴール迫る機会をつくれるのではないかとシミュレートしている。ただ、オープンな展開となるのはクロアチアも望むところで、一級品の中盤3人が力を発揮しやすい状況なのである。だからこそ、その展開となった場合には手数も人数も少なく攻めきって、リスク管理に重きを置きたい。  いずれにしても、得点をするためにはこれまで以上にアイデアやイマジネーションが必要となり、攻撃の選手は個の力の見せどころとなるだろう。これまでは守備のタスクに時間を費やされることが多かった攻撃陣だが、クロアチア戦では本来の力を見せてくれることを期待したい。そして、今の日本代表にはスピード、ドリブル、パスといったストロングポイントをそれぞれに持った選手がそろっている。森保監督なら、その特徴を生かせるベストなタイミングでの投入してくれることだろう。  最後になるが、クロアチアのウィークポイントとして体力面が挙げられる。グループステージ3戦で先発が入れ替わったのはひとりだけなのだ。チームに不可欠な優れた選手が多いとも言えるが、選手層は決して厚くない。しかも、この過密スケジュールを戦い抜くのは、どの選手にとっても困難だ。一方、負傷者などコンディション不良の選手を出してはいるが、多くの選手を起用したまさに「総力戦」で勝ち上がってきた。  中3日で戦いながらベスト8以上を目指す上では、「総力戦」で戦えるかは勝敗を左右する大事なファクターになる。そのために第2戦では、先発5人を入れ替えるターンオーバー制を採用した。クロアチア戦こそが、その采配の成果を見せるべき試合になる。  よって、走り負けることなく、これまでどおり粘り強さを見せる戦いを見せてほしい。そして、状況は異なると思うが、これまでどおり最後まであきらめず忍耐強く戦う日本人らしいサッカーを披露してもらいたい。 <文/川原宏樹 写真/日本雑誌協会>
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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