ライフ

フィナーレは「魔女焼き」の儀式! 正月まで続くイタリアの長いクリスマス

「良い子にはお菓子、悪い子には石炭を」老婆ベファーナがやって来る

老婆ベファーナ

老婆ベファーナを燃やして旧年にさようなら

 最後の祝日エピファニアはイタリアの中でも地域ごとに祝い方が異なるが、共通して言えるのはベファーナという老婆の存在。醜い魔女としてよく描かれるものの、その起源はキリスト教より前のローマ神話まで遡り、元の姿は定かではない。古代ローマ時代にすでにあった民衆の信仰は、キリスト教の普及とともにキリスト教に則した祭日へと置き換えられ、このエピファニアもその一つなのである。  1月6日になるとベファーナは、前年の行いが良かった子にはお菓子を、悪かった子には石炭を持ってくるという言い習わしで、子どもたちの下にはキャンディやチョコレートなどがたくさん届く。石炭に見立てた黒い砂糖菓子さえも売られているくらいである。  さらに、ベファーナの年老いた姿が「過ぎ去った年」の象徴とされ、私の住むヴェローナ(及び北イタリアの一部)では、木枠にぼろ布などを着せて造られた高さ10メートルほどのベファーナの張りぼてを燃やす伝統儀式も行われる。そうして旧年に別れを告げ、新しい年を心機一転スタートさせるのだ。  1月6日を過ぎるとクリスマス飾りも撤去され始め、クリスマスモードもそろそろ終わりとなる。2月のカーニバルまでしばらくお祭りはお預け。寒さが増す1月の、年末年始が終わった後に残る寂しさは日本のそれと変わらない。 <取材・文・撮影/新宅裕子>
イタリア・ヴェローナ在住。東京のテレビ局で報道記者を務めた経験を活かし、イタリア移住後も食やワイン、伝統文化、西洋美術等を取材及びコーディネート。フリーライターとしてガイドブックにはないイタリアのあれこれや現地の暮らし、マンマ直伝のレシピを紹介するほか、生ハムやワインなど食材輸出の仲介も行う。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。
1
2
3
おすすめ記事