更新日:2023年02月16日 17:14
エンタメ

2023年冬ドラマ「今からでも観たくなる傑作6作品」を独自採点してみた

「リバーサルオーケストラ」(水曜午後10時 日本テレビ系)80点

リバーサルオーケストラ

番組公式HPより

 目新しさはなく、複雑な仕掛けもない。だが、観ていると楽しく、清々しい気分になる。大人たちの青春ドラマだからに違いない。  門脇麦(30)が演じている主人公の谷岡初音は天才ヴァイオリニストだったが、心的理由から10年前に表舞台を去り、西さいたま市役所職員になっていた。地味に暮らしていた。ところが、市長・常葉修介(生瀬勝久)の勝手な思惑と意地によって、その息子・常葉朝陽(田中圭)がマエストロを務める児玉交響楽団のコンサートマスターになる。  児玉交響楽団レベルはポンコツ。だが、修介市長がライバルの市議会議員・本宮雄一(津田健次郎)の挑発に乗ってしまったため、日本一と名高い高階交響楽団と対決することになる。負けたら解散ということになってしまった。それでも児玉交響楽団にはかつての天才・初音が加わっている。朝陽の実力も世界レベル。なにより、朝陽は「負けるつもりはない」と自信をのぞかせている。  おそらく最終回は「日本一」と「ポンコツ」のプライドを賭けた演奏対決になるのだろう。最終回に名門校サッカー部やラグビー部との死闘が用意されていたかつての青春ドラマのようだ。  とはいえ、児玉交響楽団には問題が山積。フルート・庄司蒼(坂東龍汰)の生活苦問題、ヴィオラ担当・桃井みどり(濱田マリ)の娘との確執問題は団員仲間の協力で解決したが、今度はチェロ担当の佐々木玲緒(瀧内公美)が朝陽への片思いに悩んでいる。  だが、きっと仲間が助けてくれるに違いない。これも過去の青春ドラマと同じ。だから大人たちの青春ドラマであり、観ていると胸が熱くなる。

「大病院占拠」(土曜午後10時 日本テレビ系)80点

大病院占拠

番組公式HPより

 色違いの鬼の面を被り、武装した10人が、神奈川県内の大病院を占拠し、同県警と戦う物語。主演は警部補・武蔵三郎役の櫻井翔(41)で、病院内には妻で心臓外科医の武蔵裕子(比嘉愛未)もいる。この設定を事前に聞いただけで「勘弁して欲しい」と敬遠した人もいるに違いない。事実、人の機微や人情を描くような大人向けドラマとは対極にある。  だが、観ていると止まらなくなる。中毒性がある。かったるい場面がなく、見せ場の連続だからだ。まるで実力が拮抗したプレイヤー同士のバトルゲームを観ているような気分になる。  バトルゲーム感覚のドラマにふさわしく、ドローンが飛び、小型爆弾が炸裂。機関銃が乱射される。放送中はゲームのBGMのような音楽が流れ続ける。斬新で痛快だ。  新しいばかりではない。鬼たちは人質たちの過去の大罪を次々と暴いていく。これは戦前からある王道の筋書き。善人たちの仮面をワルたちが次々と剥ぐのだからカタルシスが得られる。新旧の良さ部分をうまく混ぜ合わせているから中高年以上が観ても楽しめるはずだ。
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草なぎ剛の演技力は群を抜いている
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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