更新日:2023年02月16日 17:14
エンタメ

2023年冬ドラマ「今からでも観たくなる傑作6作品」を独自採点してみた

『警視庁アウトサイダー』(木曜午後9時 テレビ朝日系)80点

警視庁アウトサイダー

番組公式HPより

 俳優は同じような役柄ばかり演じるのを嫌う。観る側だって飽きる。それが、この作品はよく分かっている。西島秀俊(51)にガラが悪くてお人好しの刑事をやらせ、濱田岳(34)には他人になりすまして父親の冤罪を晴らそうとしている薄気味悪い刑事役を任せて、上白石萌歌(22)には超天然で自己チューの困った新米刑事を演じさせている。  この作品を既存の刑事ドラマと同じ尺度で計るのは間違い(そんな人はいないだろうが)。ラーメン屋に置いてある成人向け劇画本『まるごし刑事』などと同一線上にあると見るべき。リアリティよりも面白さが優先されている。なにしろ西島が演じる架川英児は血が大の苦手で、見ると卒倒してしまう。上白石が扮する水木直央の思考回路はムチャクチャで、勝手な推理で上司の刑事課長(小松和重)を犯人にデッチ上げようとする。既存の警察ドラマの約束事をことごとく外している。濱田岳(34) が演じている蓮見光輔に至っては、別人として警察官になった。こんなことが万が一にも可能だったら、日本の治安は崩壊する。  それでも原作の同名人気小説に基づいていることもあり、物語の芯はしっかりしている。警視庁内の権力闘争や蓮見の父親の事件である。だから見応えがある。  上白石の魅力が炸裂している。もともと演技力には定評があったが、コメディエンヌとしても一流。架川と蓮見を完璧に舐めているが、嫌味を感じさせず、笑わせてくれる。

「罠の戦争」(月曜午後10時 フジテレビ系)80点

罠の戦争

番組公式HPより

 主演の草なぎ剛(48)の演技力は群を抜いている。孤独なトランスジェンダ―を演じた映画「ミッドナイトスワン」(2020年)で、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞など国内映画賞を総ナメにしたが、それがあらためて納得できる。 「罠の戦争」で際立つのは怒ったときの雄々しさと、悲しみを湛えたときの憂いの表情。とくに憂いがいい。草彅が演じている主人公・鷲津亨が悲しそうな顔をすると、思わず切なくなる人は少なくないはず。演技にリアリティと説得力があるからだ。鷲津の感情と自分の内面を同化できているのだろう。  鷲津は代議士・犬飼孝介(本田博太郎)に罠を仕掛け、失脚させた。秘書として20年も滅私奉公してきたが、虫けらのように扱われたためである。  1人息子・泰生(白鳥晴都)が何者かによって歩道橋から突き落とされ、意識不明となっているというのに、犬飼は「事故ということにしろ」と命じた。  事件の真相を突き止めるため、鷲津は代議士になる。そこで浮上した人物は自分の派閥のボスで民政党幹事長の鶴巻憲一(岸部一徳)。戦争は続く。  ベテランの本田、鷲津の味方である秘書の蛍原梨恵役の小野花梨(24)ら助演陣もいい。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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