更新日:2023年02月20日 18:47
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宗教2世のリアル体験を漫画で描く「教団に人生を吸い上げられた」

きっかけは子供の生命の危機

――そうやって、信者となったたもさんですが、約25年後に脱退されていますね。きっかけを教えてください。 たもさん:私は信者同士で結婚して子供も産みました。その子が4歳になった時、心臓の病気にかかるんです。病院に付き添っていると、宗教の活動から離れて、一人で考える時間が増えました。また、病院の方などの信者以外の人と話す機会も増えます。 ――洗脳によって、教団の中にしか世界がなかったものが、外界との関わりを持つことになったんですね。 たもさん:そうこうしているうちに、子供が危険な状態になったんです。その晩が峠で、輸血をしないと死んでしまうという病状でした。 ――しかし、教団には「輸血をしてはいけない」という決まりがありますね。 たもさん:なので最初は迷っていました。でも、お医者さんが「あなたの親権を奪ってでも輸血をさせます!」と本気で言ってくれたんです。そこで、私の心は試されましたね。 ――外部の私たちから見れば、そんなどうでもいい決まりは捨てて、早く輸血した方がいいと考えます。しかし、幼少期から25年間も信じ続けてきたものを、一瞬で壊すというのは、大変なことですね。 たもさん:しかも、信者である私の親は「輸血なんてとんでもないことをするな!」と激昂していました。「輸血せずに死を迎えさせることこそ素晴らしいことだ」みたいなニュアンスです。でもそこで、「教義のために人が死んでいいのだろうか」と、疑問が湧き上がってきたんです。そして輸血することを決めました。

脱会で訪れる不安

――カルト宗教からの脱会は難しいというイメージもありますが。 たもさん:そうですね。なので、脱会の手続きを教団が定める手順で進めてはダメだと思ったんです。それで、なんの手続きもせず自然消滅をするようにしました。 ――それで辞められるものなんですか? たもさん:何度も電話がかかってきましたり、電話も鳴り止まないこともありましたし、家にも繰り返し訪問されました。それでもとにかく無視し続けたんです。すると向こうが根負けしたのか、徐々に来なくなりました。 ――状況的に脱会できても、心はいかがですか?25年もの間の居場所で、考え方もポリシーも教団の教えが中心になっていたと想像できます。 たもさん:本当に自分の心の足場が崩れて「これからどうやって生きるんだろう」と怖くなりましたね。しかも、カルト宗教をやっていると、教団の中にしか友達がいなくなるので、脱会してから人間関係がまっさらになって、とても不安でした。 ――何も持たずに世界で一人になった気持ちになりますね。 たもさん:信者同士の人間関係は、今考えると極端に近いんですよ。ちょっとでも風邪を引くと、知人レベルでもご飯を作ってすぐに駆けつけてくれますし、引越しになるとみんなで手伝いに来てくれます。それで、脱会しても戻ってしまった人もいますね。
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教団に「人生を吸い上げられた」
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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カルト宗教信じてました。

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