更新日:2023年02月20日 18:47
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宗教2世のリアル体験を漫画で描く「教団に人生を吸い上げられた」

教団に「人生を吸い上げられた」

――そうすることで信者同士や教団と信者のバインドを強くするんですね。たもさんは脱会後、心の足場と友人関係を失って、どのように立ち上がったんですか? たもさん:私は元々、友達が少なかったからなんとかなりました(笑)。それと私は、漫画を描けたので体験を本にして出版することで、多くの人と関わることができました。 ――でもお母様は、まだ信者なんですよね? たもさん:そうです。教団には「脱会した人と口を聞いてはいけない」という決まりがあります。 ――脱会した人は教団を悪く言ったり、脱会させようとするからでしょうね。では、お母様とも会話ができなくなったんですか? たもさん:直接は話せなくなりましたね。でも、決まりになっているのは「一度入信して脱会した人」との会話禁止です。なので、一度も教団に入っていない私の兄弟がうまく立ち回ってくれて、彼らを通してやり取りをしています。 ――実の親と直接話せないのは辛いですね。その他、一度入ったことで脱会後も不利益を被っていることはありますか? たもさん:教団は大学教育や進学を否定するんです。賢くなられて、教団の異常さに気づかれたら困るからでしょうね。 また、エホバの証人は信者に「開拓者」になるよう勧めます。開拓者とは、布教活動に多くの時間を費やす特権階級のことで、専用の講習会を受講できたり信者たちからもてはやされたりするんです。若者は高校卒業したら開拓者になるのが当然、と圧をかけられます。 ――布教活動に報酬はあるんですか? たもさん:もちろん無給なので、みんな週に数日だけアルバイトをして、10万円未満のお給料でボロアパートにルームシェアして極貧生活です。それでも幸せだと思い込んでいます。だから私も高卒ですし、バイトしかしたことがありません。お金だけでなく、「人生を吸い上げられた」と感じています。

安倍氏襲撃事件の前と後

――安倍元首相の襲撃事件で、宗教二世の問題が取り沙汰されるようになりましたが、たもさんが脱退したのはその前です。当時、宗教二世に対する世間の反応はいかがでしたか? たもさん:誰に話しても「宗教?触りたくない」というような態度を取られていました。体験を本にして出した時に、テレビの取材をいくつか受けたんですが、結局「上からストップがかかって放送できません」と言われて、オンエアされないことが多かったです。 ――多くの人がわかっていながら遠ざけていたんですね。事件後に変化は感じますか? たもさん:取材の数も増えましたし、実際にオンエアや掲載されることも多くなりました。 ――社会がしっかり取り組もうという意思を持ち始めたのかもしれませんね。 たもさん:こうして、たくさん取り上げられるのはいいことだと思います。しかし、その発端は殺人なんですよね。宗教の問題が表に出たのはいいことでも、山上容疑者がやったことは絶対に肯定できません。   カルト宗教は対岸の火事ではない。たもさんの体験のように、誰の心にもスルッと入ってくる。現在、宗教二世の問題が認知されるようになったが、これを旧統一教会だけのものと矮小化せず、多くの人が「我が事」として考える事が重要だ。 <取材・文/Mr.tsubaking イラスト/たもさん>
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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カルト宗教信じてました。

「エホバの証人2世」の私が25年間の信仰を捨てた理由

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