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動物学者&コピーライターの双子姉妹、「幻の動物」ユキヒョウの撮影に成功

初めて目にしたユキヒョウの生息地の姿。大草原に堂々とそびえ立っていた。©︎twinstrust

初めて目にしたユキヒョウの生息地の姿。大草原に堂々とそびえ立っていた。©︎twinstrust

 幻の動物「ユキヒョウ」を追って、標高4000mを超える高山に挑む「ユキヒョウ姉妹」と呼ばれる双子の姉妹(木下こづえさん・木下さとみさん)がいる。姉妹はユキヒョウの調査研究をしながら、絶滅が危惧されているユキヒョウの保全活動を続けている。 【第1回】⇒「『幻の動物』ユキヒョウを追い、標高4000mの高山地帯を行く双子姉妹」

中学生の頃、ユーミンの旅番組で観た憧れのモンゴルへ

  モンゴル地図 姉妹が初めてユキヒョウの生息地を訪れたのは2013年11月、モンゴル中部のウブルハンガイ県にあるバガボグド山(モンゴル語で「小さな聖なる山」という意味)だった。 「きっかけは、ある動物園の方が開いてくださった懇親会でした。知り合った環境省の方とのご縁で、モンゴルでユキヒョウの保全活動を行っているNGO『イルビス・モンゴリアン・センター』(「イルビス」とはモンゴル語で「ユキヒョウ」の意味)を紹介いただきました。私もこづえもすぐに『モンゴルに行きたい』という気持ちで固まりました」(さとみさん)  なぜなら、姉妹が13歳の時に観た、憧れのユーミン(松任谷由実さん)が出演した「松任谷由実 モンゴルをゆく ホーミーへの旅」(NHK・1996年)という旅番組の風景が、脳裏に鮮明に焼き付いていたからだという。 「モンゴルの伝統的な歌唱法『ホーミー』を追い求めて旅するユーミンは、ステージとはまた違った魅力がありました。モンゴルの大自然の美しさと遊牧民の暮らしに触れ合うたびに垣間見える、ユーミンの新鮮な表情に惹きつけられました。いつか私たちもこの世界を体験してみたい、とずっと思っていたんです」(同)  そして姉妹は、多くの人との協力や支援を受けて、モンゴルへと旅立っていった。

都会暮らしの姉妹が体験した、遊牧民の暮らし

調査期間中、お世話になっていたお宅のゲル。乾燥した草原にポツンとたっている

調査期間中、お世話になっていたお宅のゲル。乾燥した草原にポツンとたっている。©︎twinstrust

 姉のこづえさんはこれまで国内外のフィールドワークに何度か参加した経験があったが、妹のさとみさんにとっては初めての体験だった。 「単独でのフィールドワークは私も初めてでしたし、始めての場所に素人のさとみを連れて行く。私はずっと緊張していました」(こづえさん) 「雪山登山ははじめてで、母親の登山靴とか、近くにあるものをかき集めて飛行機に乗りました。今思えば、当時は行くことにとにかく必死で、標高の高い僻地で何が必要なのか十分にわかっていませんでした」(さとみさん)  首都のウランバートルから高速バスで7時間、そこでドライバーさんの家に一泊させてもらい、翌日はさらにジープでゴビ砂漠を抜けて走り続けて、7時間。やっと今回の宿泊所であるゲル(遊牧民の移動式住居)に着いた。 「ゲルの中は広々としたワンルームで、トイレもシャワーも、服を着替えるような個室もありません。暖房や料理などに使う燃料は家畜の糞。大平原がひたすら続くモンゴルでは、木材はなかなか手に入らないんです。食事は飼っているヤギやヒツジのみで、飲み物はヒツジやヤギのミルクティー。実は、私たちは過去にヒツジ肉に中ったことがあったので、毎食が挑戦の連続でした。  トイレは外で、草原のどこでもOK。目隠しになりそうな窪みや岩陰などを除き込むと、先客の痕跡に出くわすこともありました。感動したのは、星空トイレ。見渡す限りすべてが星で、まるでスノードームの中にいるような感覚でした。あまりの美しさに、トイレに行きたかったことさえ忘れてしまうほど」(さとみさん)
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ユキヒョウの痕跡を探し、赤外線カメラを設置
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※3月31日(金)19:25~19:55、ユキヒョウ姉妹が「ウチのどうぶつえん」(NHK Eテレ)に出演。再放送は4月1日(土)9:20~9:50。
番組Instagram https://www.instagram.com/nhk_uchidou/

幻のユキヒョウ 双子姉妹の標高4000m冒険記

体力も能力も感性もほぼ同じ双子が、それぞれに違った職業と視点で“幻の動物”ユキヒョウの足跡を追う双子姉妹の冒険記

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