紅白で魅せたユーミン。もう生歌がきつい現実と、名曲を誰が歌い継げるか問題
サザンオールスターズや米津玄師(27)の出場で、例年以上に盛り上がった平成最後の紅白歌合戦(元旦~1月14日までNHKオンデマンドで見逃し配信中)。
そんな中、NHKホールをシックで暖かい空気に包み込んだ松任谷由実(64)の存在感が際立った。別撮りと思わせておいてからの、ひょっこりとやって来る登場シーンも粋だったし、何よりも楽曲が群を抜いて素晴らしい。
披露した「ひこうき雲」と「やさしさに包まれたなら」、いずれも品の良さと親しみやすさが絶妙なバランスで両立している。言ってみれば、音楽としてのたたずまいが清々しいのである。
作曲的に高度な試みをするとか、凝った歌詞を書くとかではなく、普段の生活から気を張っていなければ出せない気高さや、普遍的な美徳がある。改めて、得難い資質の持ち主だと感じた。
だからこそ、いまユーミンを取り巻く困難に触れないわけにはいかない。率直に言って、ユーミンはもう自作曲を歌える状態にないからだ。しかも、プロの歌手としてどうこうという問題でもない。
たとえば、風邪をひいて喋るのも辛そうにしている人がカラオケにやってきたとき、どう思うだろうか。きっと、“無理して歌わなくていいよ”と言いたくなるはずだ。いまのユーミンを観て心配になる気持ちは、それに近い。
念のため、これは批判したり価値を下げたりする目的で言っているのではない。むしろ、ユーミンの楽曲が健全に保護、伝承されるために、今からふさわしい歌い手を探したほうがいいのではないか、と思うのである。
そう言うと、“若くて歌の上手い人はいくらでもいるだろう”と思われるかもしれないが、ユーミンの楽曲は、そのような体力自慢の手にかかると一気に魅力が失われてしまうから難しい。音程が正確だとか、声が元気だとか以上に、書の“かすれ”のような美しい欠損を嗅ぎ取る感性が求められるからである。
ユーミンが歌えなくなると、名曲たちを誰が歌いつぐのか?
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