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桑田佳祐&松任谷由実とビートルズの新曲に表れた「圧倒的な差」。過去の素材を使用しているのは同じだが…

洋楽と邦楽のビッグネーム、新曲の「類似点」と「大きな違い」

 ビートルズと、桑田佳祐、松任谷由実。洋楽と邦楽を代表するビッグネームが、似たスタイルの新曲を発表しました。  ビートルズの「Now And Then」は1970年代にジョン・レノンが録音したデモテープと、2001年に亡くなったジョージ・ハリスンのギターがもとになっています。AI技術を駆使してジョンのピアノとボーカルを切り離したのちに、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターの演奏を加えて、ビートルズの”最後の新曲”として全世界で大ヒットしています。  桑田佳祐と松任谷由実の豪華コラボ「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない)」は、1986年に日本テレビで放送されたクリスマス特番のために制作された曲。2012年リリースの桑田のソロベスト『I LOVE YOU -now & forever-』で初めて音源化され、今回ユーミンとのコラボで再び脚光を浴びることになったのです。
桑田佳祐

桑田佳祐『I LOVE YOU -now & forever-』

 どちらも過去の素材をリアレンジして現代に蘇らせた点は共通していますが、しかしそこには大きな違いもあります。  ビートルズと、桑田&ユーミン。異なるアプローチについて考えてみたいと思います。

賛否両論を呼んだビートルズ「Now And Then」

 まず「Now And Then」。率直に言って、よほどビートルズに思い入れのある人でなければ、良い曲だとは思えないのではないでしょうか。まるでビートルズに憧れるアマチュアフォークバンドによるオリジナル曲のようです。  伝説のバンドの最後がこれかと思うとがっかりもしますが、野球の名選手もボテボテの内野ゴロとかで引退していくことを思えば、きっとそれでいいのでしょう。  ともあれ、本題は曲の良し悪しではありません。「Now And Then」は美談で終わらず、創作上の冷徹さを突きつけたことが印象的だったのですね。ジョンのデモバージョンにあった、いくつかのコードと転調に至るまでの進行がごっそり削られていた。これが賛否両論を呼んだわけです。  確かに削られた部分は、まさにジョン・レノン風と言うべきコードのマジックでした。F#マイナーとEメジャーを繰り返したのち、C#マイナーへと展開しDメジャーへ。そこからどこへ向かうかと思えば、もう一度Eメジャーへ戻って、その後ほとんど力技でAマイナーと思しき半端なコードからBメジャーに。そして唐突にGメジャーのサビ部分が始まる。  飛躍に次ぐ飛躍。まったく接続詞を使わずに論旨が変わっていく文章のような酩酊感。あれこそがジョン・レノン、そして「Now And Then」の肝だと考えても不思議ではありません。
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曲の良し悪し以上に賞賛に値する「姿勢」
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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