2012年 最後方から先団への“ゴルシワープ”
2015年の皐月賞を制したドゥラメンテ。先週の桜花賞では産駒のリバティアイランドが鮮烈な追い込み勝ちを決めた
写真/橋本健
皐月賞が行われるのは3回中山開催の最終日。年明けから3回目、しかも第2回と第3回は連続開催です。まだ気温も上がり切っていないため野芝の生育も不十分なので、開催が雨に祟られたりすると、内側の芝が荒れてしまうことがあります。
2012年も例外ではなく、馬場の内側が荒れ、前日の降雨で稍重だった馬場状態もあいまって、各馬とも馬場の内側を空けて外目に進路を取っていました。大外18番枠の
グランデッツァが1番人気に支持されたのも、馬場が荒れたインコースを避けられるという要因が大きかったはずです。
レースは、
ゼロスと
メイショウカドマツが競り合い、1000m通過が59秒1というハイペースに。1番人気
グランデッツァ、2番人気
ワールドエースとも後方からレースを進め、4番人気の
ゴールドシップにいたっては最後方からのレースになります。
4コーナーでは、大逃げを打ったゼロスのみが内側の進路を取り、2番手以降は馬場の中央から外へと殺到。グランデッツァ、ワールドエースは馬群の大外を回って追撃を開始します。人気馬2頭がかなりの距離ロスを受けながらも脚を伸ばすなか、ふと内に目をやると、いつのまにか忍び寄っていた白い馬体が!
なんと、4コーナーで内側に進路を取ったゴールドシップは、3コーナー17番手からコーナーワークで瞬く間に順位を上げ、直線半ばで2番手まで押し上げます。そのまま逃げ馬を交わし、ワールドエースの追い込みを退け、見事に皐月賞を制しました。
今年も中山芝の馬場状態は今ひとつで、既に馬場の内側を空けるレースも目につきます。ゴールドシップを父にもつ
マイネルラウレアが、父と同様の“ワープ”をみせてくれるかもしれません。
“瞬間移動”という意味では、
2015年の皐月賞も必見です。このレースで、好位から抜け出す横綱相撲をみせたのは、後にドバイターフを制す
リアルスティールでした。多くのファンがこの馬の勝利を確信したところ、矢のような末脚で交わし去ったのが
ドゥラメンテ。ただ、見てほしいのは直線の伸び脚ではありません(もちろん、伸び脚も凄かったのですが)。
4コーナー出口での進路取りです。
2番枠から道中インコースを進んだドゥラメンテでしたが、4コーナーをまわりきったところでは、ほぼ大外へ。気性面の難しさを出して、外側に斜行してしまったのです。鞍上のM.デムーロ騎手が騎乗停止処分になるほどの斜行は、もちろん褒められたものではありませんが、ここで進路を確保できたからこそ最後の爆発的な末脚が発揮できたという側面もあるでしょう。
小回りコースなので、ゴチャついて脚を余して敗れる馬が多い皐月賞。思い切りのいい騎乗が持ち味のM.デムーロ騎手が同レースで最多となる4勝を挙げているのも、けっして偶然ではないはずです。
今年、M.デムーロ騎手が騎乗予定なのは
ショウナンバシット。前哨戦の若葉Sを制している実力馬だけに、5度目の“デムーロマジック”が炸裂しても不思議ではありません。
文/松山崇
馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。