更新日:2023年04月19日 16:17
エンタメ

日テレvsフジの水曜ドラマ戦争に異変アリ。若い男性層を取り込めなかった『水ダウ』の壁とは

『水曜日のダウンタウン』の牙城崩せず

『水曜日のダウンタウン』

『水曜日のダウンタウン』番組公式HPより

 1年やっても浮上しなかったため、この4月からフジは路線変更。『お嫁くん』はジェンダーについて考えさせ、ブームの片付け術や料理術が盛り込まれ、さらにオフィスドラマ風味も混ぜたラブコメディー。女性が主人公であること、オフィスドラマ風味があるところが日テレの水10のカラーと重なる。  フジの路線変更の効果は早々と出た。『お嫁くん』第1話のT層は1.9%。過去4作品より大幅にアップした。明るく、分かりやすい内容なので、10代も支持したのはうなずける。  これにより最も割を食った形なのが『水ダウ』。T層は2.3%で、かなり下がった。『それパク』は1.2%。こちらも、『リバーサル――』より落とした。  半面、F1層(20~34歳の女性)からの支持は『それパク』が僅かながら上回った。『それパク』が2.7%なのに対し、『お嫁くん』は2.5%。ずっと社会で活躍する女性を描いてきた日テレの実績をF1層の視聴者たちが認めたからか。『それパク』は飲料メーカーで働く女性が主人公だ。  一方、『それパク』は超えられなかったものの、『お嫁くん』のF1層の数値も『スタンド――』と比べると、ほぼ倍増。F1層もフジの路線変更を歓迎したことになる。一方、若い男性視聴者にターゲットにした連ドラはそれ自体が難しいのかも知れない。 『水ダウ』はF1層の個人視聴率も減らし、2.8%だった。3月のF1層は4%台の後半を記録していたから、かなり下がった。フジの路線変更はこの時間帯の勢力図に大きな変化をもたらしたことになる。

『それパク』は知的好奇心をくすぐるお仕事ドラマ

 両ドラマの内容と質はどうか。『それパク』は発明やアイデアなどの知的財産を軸に据えた王道のお仕事ドラマ。社会人歴が長い人でも大半は詳しくないはずのジャンルなので、知的好奇心をくすぐってくれそう。  舞台となるのは月夜野ドリンクの知的財産部。主人公は芳根が演じる藤崎亜季で、開発部から知的財産部へ異動させられる。特許に値する新しいボトル(容器)のデザインを、ライバルのハッピースマイルビバレッジに漏らした疑いを掛けられたことが発端だった。  ハッピースマイルに勤務する大学の同級生にボトルのことを話してしまったのではないかと社内で指摘された。亜季は否定したものの、信じてもらえない。このままではハッピースマイルに權利が渡ったままで、会社は大損を蒙る。  会社のピンチを救うために親会社からやって来たのが、弁理士(知的財産法の資格を持つ法律家)でもある北脇雅美(重岡大毅)。実際、亜季を救ってくれた。ところが、この男が偉そうで、鼻持ちならないのだ。亜季と相容れない。こういった対立構図をつくるのも王道のお仕事ドラマらしい。  第2話以降は、知的財産について学んでいく亜季を視聴者が観て、一緒に知的財産について学ぶことになるのだろう。コミカルな作風だから、硬い内容にはならないはずだ。また、耳慣れない言葉が次々と登場するので、飽きさせないだろう。  押しの弱い亜季を庇護してくれるのが、常盤貴子が演じる開発部長の高梨伊織。トレンディドラマ黄金期の立役者の1人である常盤も50歳になった。頼りになる上司役が似合う。
次のページ
現代の社会問題をテーマにした『お嫁くん』
1
2
3
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ