そうして、彼が心血を注いで作り上げたのが、『ドラゴン現代文』でした。これは解答解説に対して抜け漏れが無いように徹底的にチェックされた上で作られているとのことで、全国の東大受験生に、ぜひ手に取ってほしい一冊になっているとのことでした。 　また、人前で話す活動をなるべく避けていた相生さんが、講演など表舞台に出るようになったのも、この思いが関係していました。いくら自分だけが「どんな環境でも質の高い学習手段が必要だ」と思っていても意味がない。実際の現場で、生徒の生の声に触れながら、質の高い学習手段の必要性や大切さを説いていかなくてはいけない。そう考えるようになったからこそ、彼は講演活動を始めたのでした。 　そう語る相生さんは、これから「解決すべきなのに解決されずに放置されている問題を掘り起こしていきたい」と伝えてくれました。 　 「『東大の現代文っていい教材がないよね』っていうのは、ずっと昔から言われていたことなんです。ずっと昔から言われていたってことは、ずっと昔から誰もが『これは解決すべきだ』って認識していたのと同じことでしょう。なのに、みんなこの問題を見て見ぬふりをしてきた。僕が今回『ドラゴン現代文』を出版したのは、こうして未解決問題にひとつ答えを出したってことなんです。僕はこれから社会人となって講演や出版活動とは無縁の存在になりますが、それでも仕事を通じてこうした活動を続けていきたいと思います」 ＜文／布施川天馬＞ 1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。（Xアカウント:@Temma_Fusegawa）