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東大でトップクラスの人気授業「要求することはひとつだけです」教授が語った内容とは

授業はつまらないのに著書は面白くて勉強になる

 一般に大学の教官というのは、教育者より研究者としてその職に就いた人が少なくない。だから、シラバス上に書かれた文章の素晴らしさに比べ、教室で話すときのキレや魅力が落ちてしまうことがあるのは、ある意味でしかたないことだったのかもしれない。  多くの教官は自著を授業のテキストや参考書に指定していて、その内容が授業のベースになっていることが多かったのだけれど、授業はつまらないのに、著書を読んだらウソのように面白くて勉強になったということが、その後の学生生活で実際に何度もあった。  とはいえ、きわめて未熟だった当時の自分に、目の前の教官達の深い知的魅力を感じ取れるだけの知性や洞察力が備わっていなかったことも間違いないだろう。  あるいは、僕の勝手な期待が大きすぎたというのもある。実際、ちゃんと探せば面白い授業や魅力的な教官はほかにも見つかったし、僕にはまったく面白くなくてもほかの友人達には響いている授業もあるようだった。

予想外の雰囲気に深くがっかりしてしまったが…

タカサカモト

タカサカモトさん

 それでも少なくともこの授業初日においては、まだうまく言葉にはしきれなかったものの、午前中に見てまわった多くの教室に漂っていた予想外の雰囲気に、深くがっかりしてしまったというのが僕の偽らざる本心だった。  そうした経緯もあったので、5限目にしてようやく出会った小松教官が放っていた独特の迫力は、まさに、僕が夢中でシラバスを読み漁っていたときに求めていた空気感、緊張感、そのものだった。やっと見つけた、という気持ちだった。  こうして巡り合った科学史の授業だったが、この初回の授業でもう一つ興味を引かれたのが、その場で発表された授業の評価方法だった。  たいてい、大学の授業というのは試験かレポート、またはその両方によって評価されて成績が決まる。この科学史の授業の場合は期末試験のみということで、それ自体はまったく珍しい方法ではなかったが、面白かったのは2種類の試験を用意すると宣言されたことだ。
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科学史の授業で宣言された「2種類の試験」
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フットリンガル代表。1985年4月12日、鳥取県生まれ。東京大学文学部卒業。田舎から東大に進学後、人生に迷う。大学の恩師の助言で自分に素直に生きた結果、メキシコでタコス屋見習い、鳥取で学び場づくり、ブラジルの名門サッカークラブ広報、ネイマール選手の通訳などを経験。Twitter:@grantottorino Instagram:@takafotos

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東大8年生 自分時間の歩き方

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