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東大でトップクラスの人気授業「要求することはひとつだけです」教授が語った内容とは

「一見簡単なようで実は存外に難しいこと」

「この授業でみなさんに要求することは、たったひとつだけです」  初回のガイダンスを経て、本格的な授業開始日となった2回目の冒頭だった。あらためて小松先生から、授業の方針が語られた。 「自分の目で見て、自分の心で感じて、自分の頭で考える。一見簡単なようで実は存外に難しい、たったこれだけのことを、みなさんには、つねに実践してほしいし、できるようになってもらいたいと思います。そして、自らの目、自らの心、自らの頭で見て感じて考えた先に、生とは何か、死とは何か、生きるとは何か、死ぬとは何かということについて、いまから3カ月後に迎える最終授業の日、みなさんの考えが、いまより一歩でも深まっていたとしたら、この授業は成功です」  つねにピンと伸びた背筋に鋭い眼光、そして、緊張感とともによく響く独特の魅力的な声から発せられる言葉には、こちらの背筋も自然と正されるような不思議な説得力があった。いきなり、僕が想像していた「科学史」っぽくない内容の話ではあったが、とにかく面白い授業が始まりそうな気配が漂っていたので、この時点で出席を続けることに決めていた

名物授業と呼ばれていたのも納得だった

チョーク 実際に授業が始まると、たんに教官がその知識を学生に伝えるだけではなく、「高校教師」や「必殺仕置人」などのテレビドラマ、各種ドキュメンタリー、国会で審議された実際の法案のテキスト、漫画『あしたのジョー』など、さまざまな素材を批評的、分析的に読み解くことを通じて、自分なりの視点で物事を見ていく手法や心得を、具体的に教わっていくことになった。  あえて一言で言うなら、教官の専門分野の基本的な知識と同時に、幅広く応用できるものの見方や考え方も学べる授業ということになる。当時のキャンパスで名物授業と呼ばれていたのも納得だった。 <TEXT/タカサカモト>
フットリンガル代表。1985年4月12日、鳥取県生まれ。東京大学文学部卒業。田舎から東大に進学後、人生に迷う。大学の恩師の助言で自分に素直に生きた結果、メキシコでタコス屋見習い、鳥取で学び場づくり、ブラジルの名門サッカークラブ広報、ネイマール選手の通訳などを経験。Twitter:@grantottorino Instagram:@takafotos
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東大8年生 自分時間の歩き方

自分の目で見て、自分の心で感じて、自分の頭で考える

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